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ミステリの祭典

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朽ちゆく庭
真壁修刑事、白石真琴弁護士

作家 伊岡瞬
出版日2022年06月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 7点 ぷちレコード
(2023/03/16 22:51登録)
中堅ゼネコン勤務の父は会社内でトラブルを抱え、税理士事務所に勤める母は上司と不倫関係をもち、不登校の中学生の息子は、近所の訳ありの少女と言葉を交わすようになり、やがて殺人事件が起きて世界は暗転する。
おぞましいまでの秘密の暴露がもつ切迫感、逃げ道のない閉塞感などは十二分にイヤミス的な救いのなさをもつ。見た目とは異なる真相を二重三重にして驚かせて予想外の結末へともっていく。そこには満足感と、もっと読みたくなる醜くも深い真実がある。

No.1 7点 人並由真
(2022/08/11 07:05登録)
(ネタバレなし)
 バブル期にセレブタウンとして新設されながら、今は不動産価値も下落した住宅地。そこに大手ゼネコン「樫岡建設」の現場管理職・山岸陽一が妻の裕実子と中学生の息子・陽一とともに越してきた。裕実子は「佐藤税理士事務所」のパートタイマーとして働き、一方で陽一はさる事情から不登校児としての日々を送るようになる。そんなある日、陽一は近所の少女・坂井あかりと親しくなるが。

 息子の不登校という問題を抱えながらも、表向きはそれほど極端な大事の見えない山岸家。その一家三人の家族をメインキャラクターにした、ドメスティックサスペンスミステリ。物語の前半から少しずつ緊張の糸が張り詰めていき、中盤でのある出来事を機に一気にドラマは劇的な流れに向かっていく。

 ちなみに作者の伊岡センセイ自らが、Twitterでわざわざ表を作って紹介しちゃっているので(笑)、ここでも書いていいと思うが、伊岡ワールドのレギュラーキャラクターである白石女性弁護士と、警視庁の真壁刑事が後半で登場。ともに事件に関わる広義の探偵役として、物語の一角を担う。
 
 作者も2005年にデビューしてからもう十分に中堅~ベテランの域。小説の組み立てぶりにも最早、練達のほどが感じられる印象で最初から最後までいっきに読ませる。
 一部、かの西村寿行作品的な種類の、あの手の訴求力もあるが、この小説の場合はそういった要素が十分に生きている感じ。
 後半~終盤にかけてもつれた人間関係が織りなす糸が、実は(中略)な事態を築いていたのだという(中略)な説得力もある。
 評点は8点はあげられないが、とにかく時に破綻も目につく伊岡作品の中ではさほど大きな傷もなく(?)、まとまりのいい仕上がり。余韻のあるクロージングも印象に残る。

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