正体 |
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作家 | 染井為人 |
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出版日 | 2020年01月 |
平均点 | 7.33点 |
書評数 | 3人 |
No.3 | 7点 | メルカトル | |
(2025/04/13 22:19登録) 埼玉で二歳の子を含む一家三人を惨殺し、死刑判決を受けている少年死刑囚が脱獄した! 東京オリンピック施設の工事現場、スキー場の旅館の住み込みバイト、新興宗教の説教会、人手不足に喘ぐグループホーム……。様々な場所で潜伏生活を送りながら捜査の手を逃れ、必死に逃亡を続ける彼の目的は? その逃避行の日々とは? 映像化で話題沸騰の注目作! Amazon内容紹介より。 やはりこの人の文章力は本物でしたね。群を抜くリーダビリティ、全く淀む所がなく流れるような文章でぐいぐい引っ張っていきます。かなりの大作ですが、長さが気にならない構成の妙も読みどころです。まるで連作短編の様な体裁で、目先を変え乍ら物語は進行します。登場人物も舞台ごとに変わってくるので当然多くなりますが、混乱することはありません。それは、人物像がキッチリと描き分けられているからに他なりません。 ミステリとしてよりも小説として魅力を感じました。主人公である死刑囚の逃亡先で様々な出来事や事件が起こり、その度に解決に向けて真摯に向き合う彼の姿は読む者の心に訴えかけるものがあり、こんな人間が死刑囚?と言う素朴な疑問が常に付き纏います。 真相は意外に呆気なく開示されます。そこにやや不満を覚えたり、アッと驚く様な意外性に欠けると個人的には感じました。そこまで望むのは流石に無い物ねだりになってしまうので、無理筋でしょうね。いずれにしても良作であるのは間違いないと思います。様々な社会問題を含有していますし、正に社会派サスペンスの白眉と言えるでしょう。 |
No.2 | 8点 | 鷹 | |
(2025/04/06 14:22登録) 各地でのエピソードが興味深く、主人公の一言に考えさせらるところがあり、結末を知りたい自分とこのまま逃亡を続けてほしいという気持ちの葛藤がありました。 |
No.1 | 7点 | makomako | |
(2022/05/21 07:22登録) 染井為人氏の小説は初めて読みました。かなり長いお話ですが、途中からは興味深々で読むのに大変ということはなく十分楽しめました。 お話の内容としてはいってみれば連作もののような体裁です。 殺人犯の容疑で少年ながら死刑が確定している若者が、脱走を図りその経過にいろいろな人たちとかかわるといった筋立てです。一つずつのお話が独立しているが、最後にそれが結び付いて結末となります。 詳しくはネタバレとなるので述べませんが、力作であることは間違いありません。 登場人物もあまり嫌味がなく、読んでいくと主人公がだんだん好ましく思えてきます。ただ主張ある作品なので読む人によっては好まないところがあるかもしれませんが、私は好ましく思いました。 作者のほかの作品も読んでみよう。 |