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ミステリの祭典

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探花
隠蔽捜査9

作家 今野敏
出版日2022年01月
平均点6.67点
書評数3人

No.3 6点 E-BANKER
(2024/12/31 13:33登録)
ついに「隠蔽捜査シリーズ」もVOL.9となった。足掛け何年だろう?
長く続くシリーズというのは、やっぱり面白くて読者の支持も強いからだろう。本作についてもそれは同じ。私にとっても、続編が待ち遠しいシリーズとなった。もちろん竜崎伸也の言動が読みたいのだ。
単行本は2022年の発表。

~横須賀基地付近で殺人事件が発生。竜崎は、極めて異例ながら米海軍犯罪捜査局のリチャード・キジマ特別捜査官の参加を認め、そのまま日米合同捜査の指揮を執ることに。一方、八島圭介が警務部長として県警本部に着任。竜崎の同期で警察庁トップ入庁、決して腹の内を見せぬ男。八島には、前任地の福岡での黒い噂がつきまとっていた。さらに留学先のポーランドで息子の邦彦が逮捕されたとの一報が飛び込み・・・~

タイトルの意味は、中国の科挙制度でトップから三番目の成績の者のこと。竜崎が同期で三番目、つまり「探花」ということ。ちなみに、本作で竜崎の敵役として登場する同期の八島がトップ、科挙でいうところの「状元」(というらしい)。へぇ・・・

肝心の本筋なのだが、前作でも書いたと思うけれど、とにかくスムーズすぎ!
特段のピンチもなく、真犯人逮捕。竜崎の周りで起こった不穏な空気も、竜崎の手にかかれば、同期トップだろうが、日米地位協定だろうが、衆議院選挙だろうが、ポーランド大使館だろうが、無事に解決してしまう。
それはそれで、もちろんいいのだけどね。
本作が神奈川県警異動後、二つ目の事件でまだ慣れないと作中で何度も独白している。ただ、そこは原理原則を貫く男、竜崎伸也。
神奈川県警の猛者どもも、手の内にいれた感がある。

ますます「理想の上司」となった竜崎。もはや無双といってもいいくらいだけど、シリーズはまだまだ続きそうな気配で楽しみも続いていく。
(先日たまたま山下公園付近を歩いていて、左手にある大きなビルをみると「神奈川県警」の文字が! これが竜崎のいるビルかあ!ってフィクション通り越して感嘆してしまった。ある意味「聖地巡礼」・・・)

No.2 7点 haruka
(2024/10/03 11:51登録)
事件そのものは単純だったが、米軍基地との関係性、同期トップの八島の登場、息子の失踪など、ストーリーは楽しめた。

No.1 7点 HORNET
(2022/05/04 21:55登録)
 横須賀・ヴェルニー公園で刺殺体が発見された。目撃者によると、刃物を持った白人男性が現場近くにいたのを見たという。米軍がらみの案件か?と神奈川県警が眉を寄せる中、県警警務部長に竜崎の同期のキャリア・八島圭介という男が赴任する。八島は同庁入庁の中でトップの成績、ハンモック・ナンバーが一番の男だという。その八島が、米軍との交渉には竜崎が出向くべき、と主張する。八島の目論見は何なのか?

 本の宣伝文句には、「竜崎のライバル出現か?」と謳われているが、結果としてはライバルになんかなり得ない俗物だった。本作品はむしろ、現場たたき上げでキャリアへの反感を持つ板橋刑事課長と竜崎署長の、表層には表れない信頼関係の方が見もの。信頼を寄せながらもぶっきらぼうな態度を崩さない板橋課長、そんなことは何も気にしない竜崎署長、これが名コンビ。
 事件の裏を暴いていく過程以上に、信念の男・竜崎と、「キャリアは頭でっかち」という先入観を持っている所轄の署員とが次第に距離を縮めていく様が本シリーズの真骨頂だと思う。
 今回もそれを、十分に楽しめた。

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