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ミステリの祭典

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アンデッドガール・マーダーファルス3
<鳥籠使い>輪堂鴉夜

作家 青崎有吾
出版日2021年04月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 7点 びーじぇー
(2024/09/22 21:38登録)
吸血鬼や人造人間といった怪物や、ホームズやルパンなどの名探偵・怪盗が実在するパラレルワールドの十九世紀末のヨーロッパを舞台に、頭部だけの姿で生き続ける輪堂鴉夜、半人半鬼の青年・真打津軽、メイドの馳井静句のトリオから成る怪物事件専門の探偵が活躍するシリーズの第三弾。
今回、鴉夜たちが向かったのはドイツ南部の山間の村。そこでは少女連続殺人事件が起きており、村人たちは人狼の仕業だと主張していた。一方、怪物根絶のために手段を選ばない保険機構諮問警備部のエージェントたちや、モリアーティ教授を首領と仰ぐ面々もそれぞれの思惑を秘めて村に潜入し、鴉夜たちと三つ巴のバトルを繰り広げることになる。
このシリーズの特色である古典作品へのオマージュに満ちたホラー的要素、超人的な能力を持つキャラクターたちによるアクション、そして作者元来の持ち味である謎解きの技巧が、極めてバランス良く組み合わされた一冊と言える。特に猟師の娘が部屋からさらわれた件の解明は、登場人物の誰がどこにいて誰がいなかったかという一見微細な情報が、真相を成立させるための実にデリケートな条件となっていて感嘆させられた。

No.1 7点 人並由真
(2022/01/25 05:13登録)
(ネタバレなし)
 美麗な生首だけの不老不死の女性探偵・輪堂鴉夜(りんどう あや)は、敵対する闇の犯罪組織「夜宴(バンケット)」の次の動きを察し、仲間とともにドイツに向かった。一方、保険機構の武闘派集団で、人外の怪物退治を旨とする「ロイズ諮問警備部」の面々も、シャーロック・ホームズとの対面ののち、鴉夜たちと同じ目的地に赴く。現地=ドイツの山村ホイレンドルフでは、謎の人狼による連続少女殺人事件が進行しており、今また新たな犠牲者が!?

 シリーズ3冊目。
 特殊設定パズラーの興趣がすっかり失せてしまった前作(シリーズ第2作)は、いっきに内容がトーンダウンした感じでかなり失望させられたが、しかしこの今回の最新作は完全に復調!

 オールスターものとしては新参戦してくる有名キャラがそんなに多くないのがちょっと寂しいが(とはいえ中盤と終盤に、結構な大物と知る人ぞ知るマイナーメジャーキャラが用意されている)、それでも交錯した人物配置の上でのおなじみの悪役怪人連中を迎え撃っての伝奇活劇アクションは、なかなかの読み応え。
 そしてそれ以上に、人外の存在が跳梁跋扈するこのモンスターワールドならではのロジカル・パズラーが十分に楽しめる。犯人の意外性も、さらにそれが判明したのちに明らかになる事件(事態)の真実もサプライズ十分。特に連続殺人のなかに隠されていた(中略)には「おお!」と唸らされた。
 特殊設定パズラーとしては、これまでの3冊の中で文句なしにこれがベストであろう。

 一方でおもちゃ箱をひっくり返したような世界観はさらに広がっていく感じで、ラストに出てきた新規キャラクターの素性は評者には不明。人によってはキーワード(というかちょっとだけ出てきた人物名)で察しがつくのだろうか?
 次回もこのテンション&方向性で進行してもらえれば、ウレシイ。
 あー、できれば、もうちょっと、この時代&世界観設定ならではの「ホームズのライヴァルたち」の客演を期待したいところではありますが(笑)。  

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