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ミステリの祭典

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告解

作家 薬丸岳
出版日2020年04月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 6点 パメル
(2023/08/07 06:45登録)
「今すぐ会いに来てくれなければ別れる」という恋人からのメールを見て、大学生の翔太は深夜、車を飛ばす。先程まで酒を飲んでいたが、もう終電がなかった。だが、運転中の何かに乗り上げた衝撃を覚える。恐怖で走り去るが翌日、自分が老女の命を奪ったことを知る。翔太は警察に逮捕され、懲役4年10カ月の判決を受ける。一方、被害者の夫である法輪二三久は、ある意図をもって出所後の翔太に近づいていく。
服役しても罪は償えない。ならばどのように生きていけばいいのかと苦悩する。その贖罪を問い掛けるうえで重要なのが、翔太に接近を図る法輪の存在だろう。法輪が望むものとは何なのかが終盤、前面にせりだしてきて、驚きとともに感動を呼ぶ大きなうねりを作り上げる。
エピローグでさらに静かに盛り上げて、優しく力強い台詞を出して、温かな余韻を味あわせる。罪と罰をめぐる物語の構図が複雑かつ重層化されて、キャラクターの輪郭が一段と際立ち、テーマが鋭く強く打ち出される。犯した罪は一生消えない。しかし、その罪を抱えて前向きに生きていくことは出来るはず。翔太のある言動を身勝手ととるか、リアルととるかで評価が分かれるかもしれない。最後に、何よりもタイトルがもつ深い意味が分かり、作者の意図が明確になる。

No.1 8点 HORNET
(2021/07/10 21:43登録)
大学生の翔太は、飲み会後に彼女に「今すぐ来てくれないと別れる」とメールを受け、飲酒運転で向かう途中に一人の老女を撥ね、命を奪ってしまうが、そのまま走り去る。ひき逃げ犯としてすべてを失った翔太は4年の服役となり、刑期を全うするが、出所後に待っていたのは被害者の夫である法輪二三久との意外な出会いだった―
 最近よく見られる、犯罪被害者と加害者とのやりとりを描いた作品だが、非常にひねりのある面白い展開で、読まされた。読後感もよく満足できた一冊。

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