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ミステリの祭典

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殺人出産

作家 村田沙耶香
出版日2014年07月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 7点 みりん
(2024/08/31 22:15登録)
『コンビニ人間』で衝撃を受けた村田沙耶香の奇想・異常・狂気の詰まったSF短編集。「10人出産すれば1人を殺すことが許される」という異次元の少子化対策を打ち出した日本。その制度に対する意見の割れ方が現代における死刑制度の比ではないことは想像に容易いですね。あまりにもショッキングなラストは『コンビニ人間』の狂気のラストを連想せずにはいられない。異常の描き方に著者の信念のようなものを感じる。
他にも生殖や生死に関する短編が3つ。1時間半ほどで読める満足度と完成度の高い短編集。
非ミステリ作家の中で今最も気になっている作家です。

No.1 7点 メルカトル
(2021/05/09 23:09登録)
今から百年前、殺人は悪だった。10人産んだら、1人殺せる。命を奪う者が命を造る「殺人出産システム」で人口を保つ日本。会社員の育子には十代で「産み人」となった姉がいた。蝉の声が響く夏、姉の10人目の出産が迫る。未来に命を繋ぐのは彼女の殺意。昨日の常識は、ある日、突然変化する。表題作他三篇。
『BOOK』データベースより。

村田紗耶香が2016年『コンビニ人間』で芥川賞を受賞したのをご存知の方は多いと思います。他にも受賞歴が幾つかあるのは、本作を読んで凄く納得の行くことだと感じ入りました。特に表題作の中編は素晴らしいです。私はこれ程美しく幻想的な殺人シーンを読んだ事がありません。設定は100年後とは言え、荒唐無稽で無茶苦茶ですが、妙にリアリティがあるんですよね。それは作者の筆捌きの見事さにあるのではないでしょうか。多すぎず少なすぎない情報量、流れるような筆運び、的確な心理描写など見どころは少なくありません。ホラーとしてもSFとしても存分に楽しめます。勿論文学作品としても。

『トリプル』『清潔な結婚』はどちらもノーマルな性交渉を超えたところには一体何があるのかを極限まで追及する、異色作となっています。あり得ないと一蹴出来ない説得力を有した、アブノーマルな世界を見せつけてくれます。
最後の『余命』は掌編ながらとても印象深い作品です。ネタバレになりそうので内容については何も書かない方が賢明と思われますので割愛させて頂きます。只々その奇想に感心させられるばかりですね。

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