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ミステリの祭典

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ニューロマンサー

作家 ウィリアム・ギブスン
出版日1986年07月
平均点6.33点
書評数3人

No.3 5点 虫暮部
(2021/07/01 14:24登録)
 今読むと随分陳腐だ……サイバーパンクは何でもアリな設定になりがちで、却って作者の想像力の限界が問われる。黎明期ゆえに本作のハードルは低めで、先鋭的な後続作品に追い越されてもまぁ止むを得まい。記念碑的作品だと持ち上げるよりも、同じ土俵で戦わせて負けを認めるほうが誠実な評価だと思う。

 キャラクターは好きかな。モリイのミラー・グラスは全裸になっても外せないんだよね。うおぉ。

No.2 7点 糸色女少
(2021/06/17 00:07登録)
脳とコンピューター端末を接続、そのデータ網を頭の中で再構成した「電脳空間」と呼ばれる幻想世界を舞台にした近未来SF。
情報、場面、人物がさまざまに交錯するスピーディーな展開は、まさに「反射神経で読む」感がある。冒頭に登場するハイテクノロジーの最先端と闇市場が混在する、奇怪に変容した東洋のイメージは、映画「ブレードランナー」に通じている。

No.1 7点 クリスティ再読
(2021/04/27 22:01登録)
ハードボイルドというは、何より文体だと、評者は思う。サイバーパンクというSFの流行を作った本作だけど、当サイトだからこそ、ハードボイルドの新しい展開みたいに捉えてみるのも一興。
実際、本作のプロットは悪党パーカーみたいなケイパー物であり、それ以上でも、それ以下でもない。また、サイバースペースやらカウボーイやらサイバーパンク特有のガジェットだって、インターネットの元になったARPAネットをベースに空想されたものと解釈可能でもあって、これらを執筆時点でさえも「誇張された現実」と見るのもいいかもしれない。さらに言えば、もちろん本作の「未来予測」はかなりのところ当たっていたわけだから、「今」で考えればまさに「SFではなくて現実」である。
いや言いたいのは、ハードボイルドとは「男の感傷のダダ漏れるナニワブシ」ではなくて、「現実の捉え方」だ、ということ。そうしてみると、本作は確かに「現実の見え方」を変えて見せたのだろう。そして「リアル」と「ヴァーチャルなリアル」の区別が付きづらくなった「今」、まさにそれに直面して「リアル」の捉え方を「フリップ」してみせた本作の意義、というのをSFに限定する必要はない。

港の空の色は、空きチャンネルに合わせたTVの色だった。
「別に用(や)ってるわけじゃないんだけど―」
と誰かが言うのを聞きながら、ケイスは人込みを押し分けて《チャット》のドアにはいりこんだ。
「―おれの体がドラッグ大欠乏症になったみたいなんだ」
《スプロール》調の声、《スプロール》調の冗談だ。

まあだから、固有名詞やジャーゴンが説明後回しで飛び交う、読みづらい小説であることは確か...でもこの読みづらさを「(新しい)SFっぽさ」と捉えるべきだし、「新しい現実」に急に放り込まれた感覚が作品のテーマそのものなのだとも思う。

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