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ミステリの祭典

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死んでもいい

作家 櫛木理宇
出版日2020年04月
平均点6.00点
書評数3人

No.3 6点 よん
(2024/03/07 14:32登録)
ある男のストーカーとなった中年女性が、男の妻を鉈で襲った事件を描く「その一言を」は、壊れた感情が幾重にも折り重なった一編で、そうした心の動きが読み手にじわじわと侵食してくる刺激が味わえる。「死んでもいい」の最後で明かされる若い心の虚無感や「ママがこわい」における毒と毒のぶつかり合いなど、生理的に否定したくなる感情が盛り沢山だが、読み物としては魅力的である。

No.2 6点 SU
(2022/11/23 20:21登録)
よくぞここまでと言いたくなるくらいに嫌なシチュエーションのもとで話を展開させ、思いがけない地点にフィニッシュを決めて見せる。特に「彼女は死んだ」で使われる「いい人」「やさしい人」といった言葉のニュアンスが印象的。
なお、収録作はそれぞれ独立した内容ながら、竹本健治の「ウロボロス」シリーズや澤村伊智の「恐怖小説キリカ」を想起させる巻末の「タイトル未定」だけは最後に読んでいただきたい。

No.1 6点 メルカトル
(2021/02/03 22:26登録)
「ぼくが殺しておけばよかった」中学三年の不良少年・樋田真俊が何者かに刺殺された事件。彼にいじめを受けていた同級生・河石要は、重要参考人として呼ばれた取り調べでそう告白する。自分の手で復讐を果たしたかったのか、それとも…少年たちの歪な関係を描いた表題作他、ストーカーの女と盗癖に悩む女の邂逅から起きた悲劇「その一言を」など書き下ろしを含む全六篇を収録。人間の暗部に戦慄する傑作ミステリ短編集。
『BOOK』データベースより。

それぞれ持ち味の違うイヤミス系ミステリ短編集。
例えば反転を味わえるもの、或いは誰が誰を殺したのか最後まで巧妙に隠蔽されたものなど様々な作風を味わえますが、底意地の悪い人間やゾッとする程サイコな人物が続々と登場します。表題作を読んだ時点ではやや期待外れかなと思いましたが、その後は順調に重苦しくて嫌な感じの作品が並び、作者の底力を感じました。

マイベストは『ママがこわい』で、双子の幼稚園児の母親でとんでもないモンスターペアレントの暴れっぷりを描いたかと思うと、次第に視点が他の人物に変わって、裏に隠れていた思いも寄らなかった真実の物語を読者に見せつけるというアクロバティックな妙技を披露して、唸らせます。
書下ろしの『タイトル未定』はまるで綾辻行人ばりの酩酊感を伴うホラー色の強い作品です。途中まで櫛木理宇自身が出てきて、自らを男として登場させています。あれ?と思っていたら、あ、そういう事だったのねとなりますが、またまたそれが引っ繰り返されて・・・といった猫の目の様に目まぐるしく変化する気味の悪さには良い意味で辟易としました。

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