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ミステリの祭典

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うるはしみにくし あなたのともだち

作家 澤村伊智
出版日2020年08月
平均点7.00点
書評数3人

No.3 6点 パメル
(2023/06/05 07:07登録)
四ツ角高校の三年二組で、クラスでナンバー1の美少女だった羽村更紗が自殺し、続いてナンバー2の野島夕菜が授業中に顔から血膿を噴き出すという凄まじい異変の連続から始まる。どうやら、人の顔を美しくも醜くも出来る「ユアフレンド」なる呪いを何者かがかけているらしく、更紗もそのせいで顔が老婆のようになり、悲観して自殺したようだった。担任の小谷舞香は、「ユアフレンド」にまつわる噂を聞き、事態を止めるべく奔走するが。
学校という狭い世界での、美醜価値観に基づく人間模様、教師たちの悪趣味のメタ推理。少女たちの美醜が、惨劇を引き起こすホラーの伝統を踏まえながら、そこに現代的な批評性を加えている。それは、女性が男性から顔の美醜で格付けされたり、女性自身がそれに基づいてスクールカーストを形成したりするようなルッキズムの呪縛に対しての批判である。ルッキズムの問題は、「人は見た目ではない」というところに単純に落としがちだが、そうならないところが、この作品の良いところ。
呪いの法則を解き明かすミステリ的興味の果てに浮かび上がる真犯人の像は、あまりにも悲哀に満ちていて切実だ。「美醜とは何か」という問題を突き付ける苦い後味が印象に残るホラーミステリ。

No.2 7点 sophia
(2021/07/14 21:27登録)
最終盤のユアフレンドの正体が明らかにされるところはよかったのですが、××さんが開けっぴろげ過ぎであること、そしてスマホが便利過ぎであることに少し醒めてしまいました。登場人物は下衆な人間が多いです。それも生徒以上に親や教師に問題があります。特に犯人の親はあり得ないでしょう。それでも人の親なのか。

以下ネタバレ

犯人は自分で思っているように醜くはないのではないかという私の読みは、スケープゴートの登場で一旦はかわされた形になりましたが、しかしそのスケープゴートの方も最初はあまり醜いという扱いはされてませんでしたよね。この辺りのバランスは作者も苦心したのではないでしょうか。それと「誰にも気付かれないように渡す」の定義が最後までよく分かりませんでしたね。「誰にも」に相手本人も含まれるのかどうかがまず意見の分かれるところだと思いますし、メールがありなら封筒を相手に直接手渡すのもありになりませんか?

No.1 8点 HORNET
(2021/06/20 20:52登録)
 四ツ角高校3年2組カーストの頂点、羽村更紗が突如自殺した。葬儀は彼女の顔が隠されたままという不審な様子で行われた。すると彼女の死をきっかけに、次々女生徒が見えない力によって容姿を傷付けられていく。担任の小谷舞香はこの異変の真相を探るうちに、学校に伝わる怪伝説を知る。それは、カースト下位の女子が「ユアフレンド」というおまじないにより、上位女子に復讐をするというおまじないの存在だった――。
 リア充女子が実権を握り、不器量な女子は忸怩たる思いでその下に甘んじるという、スクールカーストを題材にしたホラー・ミステリ。昨今のイヤミス系でよく見る舞台ではありながらも、ホラー的な臨場感・疾走感と、「呪いをかけているのは誰なのか?」というフーダニットの魅力とが掛け合い、非常に魅力的な作品だった。
 

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