| あの日、君は何をした 三ツ矢&田所シリーズ |
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| 作家 | まさきとしか |
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| 出版日 | 2020年07月 |
| 平均点 | 6.50点 |
| 書評数 | 4人 |
| No.4 | 6点 | メルカトル | |
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(2026/05/15 22:30登録) 北関東の前林市で平凡な主婦として幸せに暮らしていた水野いづみの生活は、息子の大樹が連続殺人事件の容疑者に間違われて事故死したことによって、一変する。深夜に家を抜け出し、自転車に乗っていた大樹は、何をしようとしていたのか――。 15年後、新宿区で若い女性が殺害され、重要参考人である不倫相手の百井辰彦が行方不明に。無関心に見える妻の野々子に苛立ちながら、母親の智恵は、必死で辰彦を探し出そうとする。 刑事の三ッ矢と田所が捜査を進めるうちに、無関係に見える二つの事件をつなぐ鍵が明らかになる。 『完璧な母親』で最注目の著者が放つ、慟哭のミステリー。 Amazon内容紹介より。 105頁までの一部は大樹の母親であるいづみの視点で、執拗に描かれくどい位の内容になっています。なぜ息子が死ななければならなかったのかが繰り返し違う表現で書かれ、いづみの心痛が胸に刺さります。が、あまりの変容ぶりに心が付いて行けない、そんな心境になることも事実です。そして二部はガラリと変わって、二人の刑事が行方不明の男を探っていく姿を多視点で描いています。 この両者の間に必ず何らかの関係性がある筈だとは分かっているのですが、なかなかそれらを繋ぐ鍵が見つからず、ヤキモキさせられました。しかしいづみが二部で人間の生まれ変わりを信じるに至るまでの心理描写はとても印象に残りました。 結局意外な形でタイトルの様な少年はあの日何をしようとしていたのかが明かされ、その真相にはちょっと意表を突かれました。 本作は人間がよく書けているし、なかなかのリーダビリティでぐいぐいと引っ張っていく文章はお見事です。特に三ツ矢の人間性は掴み所がないのが又魅力的で、この事件の探偵役としてはうってつけと言えるでしょう。佳作であり力作だとは思いますが、どことなく消化不良な点が気になるところであると思いました。 |
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| No.3 | 6点 | ぷちレコード | |
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(2025/03/27 21:49登録) 水野大樹は、ある晩自動車事に遭い死亡してしまう。彼が深夜に外出した理由が不明だったため、未解決事件への関与を疑う風評が流れ、母親のいづみの心は深く傷ついた。 わが子を喪った哀しみにいづみの精神が崩壊していくさまが描かれるのが序盤の展開で、やがて十五年の時が経過して別の殺人事件が発生する。本書の特異さが際立ってくるのは、新旧二つの事件を結び付ける糸が見え始める中盤からで、捻じれた心理の描き方に戦慄させられる。 |
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| No.2 | 8点 | HORNET | |
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(2022/02/23 13:36登録) 広告代理店に勤める24歳女性がアパートで殺害された。彼女と不倫関係にあった男が同日から行方不明になっており、捜査にあたった捜査一課の三ツ矢と田所は当然その行方を追う。ところが捜査を進める先々で、15年前に起きた、中3男子の事故死事件が持ち上がってくる。二つの事件に関わりはあるのか?母親を殺された過去を持つ、一風変わった刑事・三ツ矢と田所が、地道な聞き取りで事件の真相を探り出す。 「1部」で描かれる15年前の物語と、「2部」からの本編が、後半に行くにつれ次第につながっていく。よくある手法ではあるのだが、それぞれの様相からはなかなかつながりが見えなくて、「いったいこれがどう関係してくるのか?」という興味が最後まで尽きない。事故で亡くなった中3の男子が「なぜ、死ななければならなかったのか」という謎がずっと持続され、女性殺害事件の捜査の進捗と上手に歩調を合わせて明らかになっていく手際も見事だった。奇を衒った仕掛けがあるわけでもない、ある意味オーソドックスなミステリなのだが、母子(娘)関係の問題も絡めながら非常に魅力的なストーリー展開がなされていた。 最後の1章がまた、とても効果的だった。 |
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| No.1 | 6点 | 猫サーカス | |
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(2020/10/30 18:03登録) いびつな家族のありようが殺人事件の捜査の中で浮かび上がる。2004年、世間を騒がせた宇都宮女性連続殺人事件の容疑者が警察署のトイレから脱走し、3日後の未明、不審人物として警察の職務質問から逃れた男がトラックに衝突して死亡する。死んだのは容疑者と無関係の中学生水野大樹。この事件により母親のいづみの人生は一変する。それから15年後、若い女性が殺害され、重要参考人である不倫相手の百井辰彦が失踪する。捜査に当たる刑事の三ツ矢は二つの事件の関連性を見いだそうとする。二つの関連がわかるのは終盤になってからだが、パズルがかみあうと伏せられていたカードが一気にひっくり返されて、驚きの連続となる。刑事の三ツ矢をはじめ、主要人物がみな家族問題を抱えており、母親の狂気・妄執に焦点があわさって、物語は一段とねじれ、切実な響きを増すことになる。少年少女らの真の姿を見せつけるラストシーンも鋭く強烈。 |
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