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ミステリの祭典

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あの日、君は何をした
三ツ矢&田所シリーズ

作家 まさきとしか
出版日2020年07月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 8点 HORNET
(2022/02/23 13:36登録)
 広告代理店に勤める24歳女性がアパートで殺害された。彼女と不倫関係にあった男が同日から行方不明になっており、捜査にあたった捜査一課の三ツ矢と田所は当然その行方を追う。ところが捜査を進める先々で、15年前に起きた、中3男子の事故死事件が持ち上がってくる。二つの事件に関わりはあるのか?母親を殺された過去を持つ、一風変わった刑事・三ツ矢と田所が、地道な聞き取りで事件の真相を探り出す。

 「1部」で描かれる15年前の物語と、「2部」からの本編が、後半に行くにつれ次第につながっていく。よくある手法ではあるのだが、それぞれの様相からはなかなかつながりが見えなくて、「いったいこれがどう関係してくるのか?」という興味が最後まで尽きない。事故で亡くなった中3の男子が「なぜ、死ななければならなかったのか」という謎がずっと持続され、女性殺害事件の捜査の進捗と上手に歩調を合わせて明らかになっていく手際も見事だった。奇を衒った仕掛けがあるわけでもない、ある意味オーソドックスなミステリなのだが、母子(娘)関係の問題も絡めながら非常に魅力的なストーリー展開がなされていた。
 最後の1章がまた、とても効果的だった。

No.1 6点 猫サーカス
(2020/10/30 18:03登録)
いびつな家族のありようが殺人事件の捜査の中で浮かび上がる。2004年、世間を騒がせた宇都宮女性連続殺人事件の容疑者が警察署のトイレから脱走し、3日後の未明、不審人物として警察の職務質問から逃れた男がトラックに衝突して死亡する。死んだのは容疑者と無関係の中学生水野大樹。この事件により母親のいづみの人生は一変する。それから15年後、若い女性が殺害され、重要参考人である不倫相手の百井辰彦が失踪する。捜査に当たる刑事の三ツ矢は二つの事件の関連性を見いだそうとする。二つの関連がわかるのは終盤になってからだが、パズルがかみあうと伏せられていたカードが一気にひっくり返されて、驚きの連続となる。刑事の三ツ矢をはじめ、主要人物がみな家族問題を抱えており、母親の狂気・妄執に焦点があわさって、物語は一段とねじれ、切実な響きを増すことになる。少年少女らの真の姿を見せつけるラストシーンも鋭く強烈。

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