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ミステリの祭典

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ツィス

作家 広瀬正
出版日1971年01月
平均点7.00点
書評数3人

No.3 5点 ことは
(2024/10/09 23:10登録)
終盤の展開は、ちょっとどうだろう。これはありえないなぁ。意外性はあるが、納得感がない。風刺を含んでいるのかなぁ?
よい点は、シミュレートしようという意図は強いこと。ひとつひとつのエピソードはかなり具体的で、情景描写は細かい。とくに(きっと作者が好きな)銀座周辺は何度もでてくる。
ネットで感想を拾い読みした中では、「高等な童話」という評に共感した。
ラストシーン(最後の数ページ)に含みがあるが、自分の読みが正しいか、自信がない。(政府が意図的に便乗した? xxからxxをxxxため?)

No.2 7点 メルカトル
(2021/04/18 22:36登録)
東京近郊の海辺の町で密かにささやかれはじめた奇妙な噂。謎のツィス音=二点嬰ハ音が絶え間なく、至るところで聴こえるというのだ。はじめは耳鳴りと思われたこの不快な音はやがて強さを増し、遂に首都圏に波及して、前代未聞の大公害事件に発展していく。耳障りな音が次第に破壊していく平穏な日常。その時、人びとが選んだ道は?そして「ツィス」の正体は?息もつかせぬパニック小説の傑作。
『BOOK』データベースより。

そもそもパニック小説とは、その原因となるものの追究と対峙、恐慌に見舞われる、見舞われた人々の人間ドラマ、パニックそのものの描写の三本柱によって構成されるべきものと私は思っています。ところが本作はそれらが一つも描かれていません。淡々とツィス音という謎の騒音に日常生活を脅かされる東京都民が、やむを得ず耳栓をして音のない世界を余儀なくされる様を、テレビ局の報道番組を通して描写されるのみ。
どうでもいい事ばかりクローズアップされて、肝心の先に挙げた三要素がほとんど見当たらないのにはどうにも納得がいきません。
Amazonを始め世評は高いようですが、これほど圧倒的なマジョリティと己の矮小な評価との乖離を感じた作品は初めてです。どこがそれ程読者の心を掴んだのか不思議でしかありません。しかも直木賞候補にまでなったとは。最早私のような素人書評家には感想を述べる資格すらないとすら思えてきます。いやはやどうしたものか・・・と『エンディング』まで信じて疑いませんでした。ところが


【ネタバレ】


ところが、『エンディング』でやられました。いきなりそれまで見てきた景色が一変し、ミステリとしての真の姿を現します。まさか、ツィス音がある人物の陰謀による集団幻聴だったとは思いも寄りませんでした。まあ、そんな簡単に事が運ぶとはとても思えませんが、ここに至り私の評価は激変しました。そんなどんでん返しがあろうとは想像も出来ませんでした。やはり小説は最後まで読まないと、何が起こるか分からないものですね。
しかし、ツィス音が消えてからの政府の対応には疑問を抱かざるを得ません。再発の恐れがあるのを考慮しないのは、やはりおかしいのではないかと思います。

No.1 9点 虫暮部
(2020/10/19 11:07登録)
 小さな出来事がどんどん広がるさまはスリリング。社会心理学的な卓見に膝を打つ一方、人肌の文章が巧みなので、ページを繰る手が止まらないのに熟読したいと言うアンビヴァレントな状態に。乱暴な比較ながら小松左京『日本沈没』より面白い。
 と思いつつ読み進むと更なる驚きで顎が胸まで落ちた。コレには自分の中でも賛否両論あるが、風景がガラリと変わり戦慄したことは間違いない。1955年刊行の米SF長編(作者名出すだけでネタバレしそう)に対する回答とか言ったら安易だけど、ミステリとしても読めるパニック小説。

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