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ミステリの祭典

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別館三号室の男
モース主任警部シリーズ

作家 コリン・デクスター
出版日1987年11月
平均点5.00点
書評数3人

No.3 4点 レッドキング
(2021/11/07 17:11登録)
デクスター第七作。ホテルの年越し仮装パーティー撲殺殺人事件。東野圭吾「マスカレードホテル」三谷幸喜「有頂天ホテル」のタイト(=貧乏)バージョンてとこかな。一捻りWhoWhomダニットに保険付きアリバイ時間トリック絡めた人間関係トリック・・チト切れが悪い・・が肝のシンプルミステリ。
「推定年齢は30~40歳、あるいは29歳もしくは41歳」「あるいは42歳・」「あるいは28歳・」ところどころ笑かしてくれるモース&ルイス。

No.2 6点
(2020/09/12 09:53登録)
 オックスフォードのセント・ジャイルズ・ストリートに建つ、〈ホーアス・ホテル〉の未完成の別館で殺人事件が起きた。大晦日に催された大仮装晩餐会で一等賞を獲得した宿泊客が、元日の朝顔面を殴打された血まみれの死体となって発見されたのだ。ラスタファリー教徒(ジャマイカの黒人宗教)のはでな衣裳をまとった男はドーランでコーヒー色に首から肩までを染め、あけっぱなしの窓から吹きこむ外気で凍りつくほど冷えきったベッドに横たわっていた。
 殺人のニュースが知れわたるや別館の客たちは一人残らず荷物をまとめ、警察が到着する前に姿を消してしまう。イスラム信者の仮装をし、ヤシマック(目以外を隠す黒いベール)に顔を包んだ被害者の妻もその例外ではなかった。おまけに彼らはことごとく、住所や名前を偽っていた・・・
 見知らぬ男女が集うホテルで起こった、身元不明の死体をめぐる謎。掴みどころのない難事件にモース警部が挑む、人気シリーズ第七弾。
 1986年発表。刑事ドラマ『主任警部モース』の放送が翌年から本格的に始まるせいか、前作『謎まで三マイル』から丸三年開いての刊行。このペースは次作『オックスフォード運河の殺人』まで続きます。TV放映前の打ち合わせに手を取られたのか、この辺りの作品はそこまでの出来ではないですね。
 事件の構図はチェスタートン式トリックの現代風組み合わせ。犯人側の計画は安易な所も目につきあまり面白くはないのですが、被害者側の動きや第36章におけるルイス部長刑事の手紙の分析、それに続くモースの指摘などは明快で、どちらかと言うと脇の部分が買える小説です。シリーズ上位には間違っても入りませんが、総合力でいくと『謎まで~』とそんなに差はありません。
 わりと陰惨な事件なんですが、大晦日から年明けにかけてムリヤリ駆り出されたせいか、主人公モースの言動はいつも以上に不真面目。容疑者も全員逃げ散って、前半の会話はほとんどドーヴァー警部ばりに毒が入ってます。

 彼はふたたび部屋の中を見まわし、別館三号室を出ていこうとしているように見えたが、また引き返してテレビの下の箱の引出しを一つずつ開けて、注意ぶかく隅まで調べた。
 「なにをお探しになっていたんですか?」モースといっしょに〈ホーアス・ホテル〉へもどりながらルイスが訊いた。
 モースは首を振った。「ただの習慣だよ、ルイス。テンビーのホテルで十ポンド紙幣を見つけたことがあるんだ」

 上記のようなお笑い要素はあれど、後期作品のようにエピソードでも読ませる話作りにまでは至ってないかな。採点は少々オマケしてギリ6点。そんなところです。

No.1 5点 nukkam
(2015/05/25 08:29登録)
(ネタバレなしです)  「ニコラス・クインの静かな世界」(1977年)のハヤカワ文庫版の巻末解説にデクスターの初期作品群の評価が載っていますが(評者は瀬戸川猛資)、その中では1986年発表のシリーズ第7作である本書への評価が最も手厳しく、「凡作と大差ない」とまでこき下ろされています。確かに誰もが楽しめる万人向けの本格派推理小説ではありませんが、多くの容疑者が行方不明となって事情聴取さえなかなか実現しないのにモースが強引に推理していくプロットはある意味ユーモラスで、個人的にはそこそこ楽しめました。ただ43章の最後に登場した人物が非常に重要な役割をしていることが紹介されるのですがこの人物が登場人物リストに載っていないのは大きな減点対象で、再版時にはリスト修正を出版社に切望します。

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