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ミステリの祭典

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刑罰

作家 フェルディナント・フォン・シーラッハ
出版日2019年06月
平均点7.67点
書評数3人

No.3 8点 小原庄助
(2022/05/13 08:04登録)
「犯罪」や「罪悪」には、エンターテインメント的なプロットで読ませる作品もあったが、人間の業を深く見据えて象徴性を高める純文学的な作品が目立った。
本書では、その象徴性がより強くなり人間の名前などは削ぎ落とされ、文体はいっそう簡潔になり、抽象化されている。それでいて細部の手触りは生々しく緊密で、息を詰めて読んでしまう。ねじれたユーモアで運命の残酷さをえぐられる。それは皮肉な運命に対する理解と同情が、ある種の救済として示されるからでもあるだろう。
ともかくここには、名人芸と呼びたくなるほどの鮮やかな語りと、心が震えるほどの深遠で複雑な人生の姿がある。まさに必読の傑作だろう。

No.2 8点 YMY
(2021/11/15 22:58登録)
罰をめぐる短編が十二作。ベッドで発見した見知らぬ女の真珠が引き起こす未必の故意「テニス」、犯罪組織のボスを弁護する女性新人弁護士の苦悩「奉仕活動」、危険な方法で自慰に耽る夫への侮蔑「ダイバー」などが特にいい。
どれも静かで異様に狂おしく、それでいて驚くほど澄み渡り、張り詰めている。喚起力に富んだ世界は生々しく、時にひねくれたユーモアで運命の皮肉をのぞかせる。深遠で複雑な人生の諸相には心が震える。

No.1 7点 HORNET
(2020/07/18 20:33登録)
 黒いダイバースーツを身につけたまま、浴室で死んでいた男。誤って赤ん坊を死なせてしまったという夫を信じて罪を肩代わりし、刑務所に入った母親。人身売買で起訴された犯罪組織のボスを弁護することになった新人弁護士。薬物依存症を抱えながら、高級ホテルの部屋に住むエリート男性。──実際の事件に材を得て、異様な罪を犯した人々の素顔や、刑罰を科されぬまま世界からこぼれ落ちた罪の真相を、切なくも鮮やかに描きだす。(カバー紹介)

 第三者目線の淡々とした事実描写が非常に読み易い。時に”とび”を感じてつながりが分かりにくいところもないことはないが、余分な描写を排したテンポの良い筆致が却って不気味さを助長している。
 どこまでがノンフィクションでどこからがフィクションなのかはっきりは分からないが、事実は小説よりも…という常套句が実感される。

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