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ミステリの祭典

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眠りの神

作家 犬塚理人
出版日2020年02月
平均点5.33点
書評数3人

No.3 5点 HORNET
(2020/08/10 09:40登録)
 安楽死を望む患者への自殺幇助が認められているスイス。絵里香・シュタイナーは、ボランティアの自殺幇助団体で活動するハーフ。ある時、日本で自殺幇助が疑われる事件が連続して起き、その陰に、以前絵里香の団体に所属していた日本人医師の姿が見え隠れする。真相を確かめるため日本へ渡航した絵里香は、事件を調べるうちにますます日本人医師への疑いを濃くする。

 設定も展開もよく考えられれているとは思うのだが、何となく平板でパンチのない話に感じた。これまでも各所で取り上げたり作品化されたりしている安楽死問題の域を特に超えておらず、「これまで同様」という印象に落ち着いた。真犯人も意外性をねらっているのだが、要所要所に挿入されている日記の文体の変化で予想ができてしまい、分かったときには「やっぱり」という思いだった。

No.2 5点 猫サーカス
(2020/06/19 18:50登録)
安楽死の問題を正面から扱った作品。スイスの自殺幇助団体「ヒュプノス」で活動する医師の絵里香・シュタイナーは日本での不穏な噂を聞く。高齢のがん患者が青酸カリで自殺したが、その幇助を「ヒュプノス」にいた日本人医師がしたのではないか。真相を探るために来日すると、「ミトリ」を名乗る人物による連続自殺幇助事件が起きる。ミステリ的にはミトリとは誰なのかというフーダニットの興味で引っ張っていく。ひねりも十分にあるし、関係者たちが抱えるドラマもよく練られており、犯人探しと同時に動機を探る方向(ホワイダニット)にいくのもいい。そこで問題となるのが安楽死の是非。尊厳ある死とは何なのか。スイスやオランダのように安楽死を積極的に認めるべきなのか、それは神の行為なのか、それとも犯罪なのかといった様々な問題を突き付ける。安易にカタルシスを求めず、安楽死問題に潜む危険性を提示する辺り、社会派サスペンスとして注目していい。

No.1 6点 虫暮部
(2020/06/18 12:22登録)
 しっかり書かれてはいる。それが仇になって少々優等生的? 安楽死については調べたものを出しただけと言う感じ。こういうテーマ故に思い切った暴論を示すことに二の足を踏んだ感がなくもない。ベーシックな筆力はある人だと思うので、もっとぶっ飛んでもいいのではないか(個人的には、死を美化するキャラクターをもっと前面に出しても良かったかと)。

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