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ミステリの祭典

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暴虎の牙
日岡秀一

作家 柚月裕子
出版日2020年03月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 7点 SU
(2024/08/06 21:18登録)
極道にとことん歯向かう愚連隊・呉寅会を率いる沖虎彦の波乱に満ちた青春を描いている。
マル暴刑事・大上も、日岡秀一も、そして尾谷組組長となった一之瀬守孝も、これまでのシリーズ二作に登場してきた男たちの全てを脇に回し、沖虎彦の苛烈な生き方を見事に引き締めている。
「孤狼の血」よりも前の年代から始まるが、最後は「凶犬の眼」の先まで描く物語である。つまり本書は三部作全体を包含する物語なのである。まるで男たちの挽歌であるかのような、余韻ある哀しいラストが心にしみる。

No.1 7点 HORNET
(2020/06/13 22:49登録)
戦後の闇が残る昭和57年の広島呉原。愚連隊「呉寅会」を率いる沖虎彦は、ヤクザも恐れぬ圧倒的な暴力とそのカリスマ性で勢力を拡大していた。広島のマル暴刑事・大上章吾は、そんな沖に接近し、沖の無茶を食い止めようと世話を焼くが、結局沖を獄中に送る役に。沖は懲役刑を受けて出所したが、服役中に大上は還らぬ人になっていた。再び暴走を始めようとする沖だったが、その前に今度は大上の一番弟子、呉原東署の日岡秀一が表れる…。
 「孤狼の血」シリーズの完結編。今回は時間を遡り、ガミさんから日岡へと世代が交代した間の、別のストーリーが描かれている。
 ガミさんの度量の大きさやきっぷのよさ、カッコよさは相変わらずだが、本作の中心人物・沖の魅力が物語が進むにつれて褪せていった。向こう見ずなぶっちぎれぶりが傑出していた沖だったのが、追い詰められていくにつれ小者に成り下がっていくようで、最後は破滅的な結末になってしまった。
 読み応えは申し分ないが。

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