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ミステリの祭典

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大あたり殺人事件
マローンシリーズ

作家 クレイグ・ライス
出版日1956年06月
平均点5.00点
書評数3人

No.3 5点 クリスティ再読
(2023/05/30 17:45登録)
評者は「大はずれ」からの連続で本作。まあやっぱり、こういう風に続けて読むものだよ。

「大はずれ」でのモーナとジェイクの「カジノ」を巡る賭けも決着するし、これが一応全体的な仕掛けになっているわけで、連続して読まないとこの機微がわからない。それが真相とはそうリンクしているわけではなくて、わりとご都合主義的に決着がつく。肩透かしな感じ。

で面白味はジェラルド・チューズディという身元不明の男が2度殺される、という謎。この趣向はわりと面白いし、「なぜ同じ名前?」という謎の説明もなるほど。真相は多少伏線が張られているから、何となく想像はついていた。唐突というほどではないと感じるよ。

それでもやや落ちる?と思わせるのは、ヘレンの破天荒っぷりが本作だとやや大人しめなことだと思う。前半のジェイクとのすれ違いシチュエーション(間に挟まれて困るマローン)は面白いけど、後半話がグダグダになって間延びするから、やや引き延ばしすぎ...という印象はある。後半失速で減点。

マローンは陳腐な言葉を吐いた。「所詮、人間は空に打ち上げられる途中で面倒にぶつかり、そして消える花火なのさ」

こんな言葉を吐くマローン、実は飲んでばかりのクセに有能で「シカゴ一の刑事弁護士」。パブリックイメージより二枚目寄りだと思う。訳者あとがきで小泉喜美子がマローンに「田中小実昌、殿山泰司、阿佐田哲也のお三方を足して三で割る」とアテているのは、ちょっとワキに寄せすぎだと感じるがなあ。フランキー堺くらいでもいいんじゃないかしら。

No.2 5点 E-BANKER
(2016/09/27 21:52登録)
1941年発表のマローン弁護士シリーズ。
前作「大はずれ殺人事件」の続編的位置付けの作品。
原題は“The Right Muder”。小泉喜美子訳。

~『大はずれ殺人事件』で見当違いの殺人を探り当ててしまったジェークとヘレンは、新婚旅行でバミューダへ。一方、残されたマローンは大晦日だというのに、酒場でひとりグラスを重ねるだけ・・・。そんなとき、ドアを開けて入ってきたひとりの男はマローンの名をつぶやくと床にくずおれ息絶えてしまった。果たしてこれこそが社交界の花形モーナが予告した殺人なのか? 洒落た笑いを誘うユーモア本格ミステリーの傑作~

クレイグ・ライスは本作が初読みだった・・・
本作の前に「大はずれ」があることは分かっていたけど、「まぁいいか」と思って先に読了してしまった。
別段ネタバレがあるとかではないので気にする必要はないのだけど、やっぱり発表順に読んだほうがベターだろうな

まっ、それはともかく本筋なのだが・・・
終盤までは事件の概要までもが曖昧模糊として進んでいく感じ。
ふたりの死者がどちらも正体不明の“チューズデー”なる人物ということが判明。この辺りが事件全体を貫く大きな鍵となるのだが、探偵役のマローンも犯人に振り回されて、なかなか事件の筋が見えてこないのだ。
「これ大丈夫か?」と心配になるほどの混乱ぶりなのだが、終章の解決編はなかなか鮮やか。
チューズデイ氏の謎もきれいに解き明かされ、動機・背景もクリアになりめでたしめでたし・・・

といきたいところだが、これって結構後出しが多くないか?
動機に直結する、ある登場人物の秘密についても、それまで全く触れられてなかった気がするけどなぁー
さっきは「鮮やか」と書いたけど、「唐突」と紙一重のようなものだろう。
この辺は改善の余地があるように思えた。(って今さら改善できるわけないが・・・)

評価としては水準級ということでよいだろう。
(それにしてもマローンは飲み過ぎではないか?)

No.1 5点 nukkam
(2016/08/14 00:11登録)
(ネタバレなしです) 1941年発表のマローンシリーズ第4作で「大はずれ殺人事件」(1940年)の続編にあたります。前作のネタバレはされていませんが先に本書から読むことはお勧めしません。姉妹作の関係上どうしても前作と比較されてしまい、しかも本書の方が厳しく評価される傾向にあります。私もどちらかといえば前作の方が気に入っています。決して本書が駄作というのではなく、謎解きとしては同レベルぐらいだと思います。ただ前作はどたばたを繰り返しながらも被害者と容疑者たちとの関係が少しずつ明らかになるすっきりとした展開だったのに対して、本書は被害者の正体がなかなか判明せず人物関係がもやもやしたまま物語が進行するのでやや読みにくいです。せっかくのユーモアもこの読みにくさのせいで前作に比べると冴えがないように思えます。

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