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ミステリの祭典

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暗約領域 新宿鮫XI
新宿鮫シリーズ

作家 大沢在昌
出版日2019年11月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 E-BANKER
(2020/01/05 10:42登録)
2020年、令和2年、皆さま明けましておめでとうございます。
毎年、新年の一発目で何を読もうか考えるわけですが、今回は迷うこと一切なし!
“国内ハードボイルドの金字塔”新宿鮫シリーズの最新作で。サブタイトルは『暗約領域』(なせ『暗躍』ではなく『暗約』なのか?)
2019年の発表。

~信頼する上司・桃井が死に、恋人・晶と別れた新宿署生活安全課の刑事・鮫島は孤独のなか、捜査に没入していた。北新宿のヤミ民泊で男の銃殺死体を発見した鮫島に新上司・阿坂景子は、単独捜査をやめ新人刑事・矢崎と組むことを命じる。一方、国際的犯罪者・陸永昌は、友人の死を知って来日する。友人とはヤミ民泊で殺された男だった・・・。冒頭から一気に引き込む展開、脇役まで魅力的なキャラクター造形、痺れるセリフ、感動的なエピソードを注ぎ込んだ八年ぶりのシリーズ最新作・・・~

紹介文を読んで初めて気付いた。「八年ぶりだったんだな・・・」と。そんなに経ってたんだ・・・。八年ぶりだよ。八年前って言えば、自分もまだ〇〇歳だったんだよなぁーなどとどうでもいいことを思ったりした。
もはや新宿鮫シリーズに対しては書評すら必要ないと思う。よって終了! というのも新年一発目としては寂しいので雑感だけ。

シリーズ11作目となった本作。一番の注目点はやはり新上司と相棒の登場だろうか。
新上司となる阿坂景子。ノンキャリアそして女性警察官の期待の星という存在。警察官としての原理原則、そしてルールを何よりも大切にする。当然鮫島と衝突すると思ったのだが、実際は・・・。もちろん桃井とは正反対の人物。しかし終盤読者の鼻の奥をツンとさせる。
そして相棒となる矢崎。何となく「相棒シリーズ」のような展開かと想像したのだが、そこはやはり新宿鮫だった・・・
(ただ、正直なところ、この二人、まだまだシリーズに馴染めていない感が強い。今後どうなるのか?)

作者が本作でのプロットの出発点として考えたのが「宝探し」・・・ということがネットの特設サイトに出ていた。
そう。今回、鮫島、田島組、公安、そして外国人犯罪組織の四者がこの「宝」を探し回ることになる。
いったいこの「宝」とはなにか?(〇〇〇〇と分かったときは若干拍子抜けしたけど・・・。ちょっと時代がズレてる)
なかなかこの宝の正体が判明せず、いつもの鮫島vs犯罪者たちという濃密な人間ドラマというよりは、捜査・推理の過程が重視されている感がした。
もしかしたら、これまでのシリーズ作品と比べて、この辺りを淡白と捉える読者もいるかもしれない。
実はかくいう私もそう。特に気になったのは最終盤。いつもなら、作品内に溜め込んだエネルギーのすべてを放出するかのような臨界点が描かれるのだが、今回はやや冷えていたように思う。
これは本作が新たな展開への序章だからなのか、それとも経年劣化なのか・・・若干気になるところ。

でも、トータルで評すれば十分に面白い。正月の静かな空間で、少しずつ、味わうように読ませていただきました。
まさに、作者からのクリスマスプレゼント、いやお年玉・・・かな。
(結局『暗約』の意図ははっきり分からず・・・)

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