home

ミステリの祭典

login
カモフラージュ

作家 松井玲奈
出版日2019年04月
平均点6.00点
書評数3人

No.3 6点 ことは
(2023/09/03 12:59登録)
本サイトにあると思わなかった。ミステリではないよなぁ。言いくるめるとしたら、一部ホラー風味があるので、「ホラーはミステリだよね」と強引に紐づけするくらいかなぁ。
ミステリではないけれども、なかなか楽しかった。シチュエーションとキャラクターとそのリアクションを楽しむ小説。
楽しい言い回しも多い。
例えば「拭っても、拭っても」の冒頭。地下鉄の階段をのぼる可愛らしい女の子を描写し、待ち合わせしていた彼氏とはしゃぐのを見たところで、語り手のひと言。”なんだこの流れ弾に当たったような気分は”。共感できるよ。
「いとうちゃん」は、メイド喫茶て働く女の子が語り手で、(読み手の経験値がないからか)もはや異世界ファンタジーの趣き。
ホラー風味の話もあり、多彩な作風で飽きさせない。すごいな。
元売れっ子アイドルで、大河ドラマにもでる女優で、小説も書く。多才だなぁ。

No.2 6点 zuso
(2023/08/16 22:29登録)
不穏さがベースにある男女の官能物語からスプラッタ・ホラーまで収録作はバラエティに富んている。
主人公たちは希望通りの彼氏や夢を手に入れたのに、喜びきれない事態に苦しんでいる。そして得たものを嫌いにならないようにすることが「愛」だと思っている。「私が望んだのだから」と言い聞かせて、無理やり人生を進めようとする。
奈津子の親友・洋子の言葉に、書き手自身のこの先を見つめるまなざしと矜持を感じたし、女二人のラストシーンが何となくエロティックなのもいい。あらかじめ用意された正しさを手放すことで得る、心身の解放のされ方が新鮮。

No.1 6点 メルカトル
(2019/08/19 22:21登録)
油断していると、次々予想を裏切るメニューが出てくるような短編集。
――島本理生(作家)
明太子スパゲティをこのうえなくおいしそうに書ける人。信頼せざるを得ないのである。
――森見登美彦(作家)

あなたは、本当の自分を他人に見せられますか――。
恋愛からホラーまで、松井玲奈が覗く“人間模様”。鮮烈なデビュー短編集。

アイドルグループSKE48の元メンバー、W松井の片割れで女優の松井玲奈(ゲキカラ)の作家デビュー作。
滑らかな文章で描かれる短編はホラー、不倫、潔癖症、過食などをテーマにしながら、「食」が共通のキーワードとして取り上げられています。本作品集は彼女の小説家としての素養が垣間見られ、十分お金を取れるだけのものを有していると思います。ただ、個人的には低刺激なのとオチがないのが不満点ではあります。そりゃプロ並みのエッジを効かせた過激な内容を期待するのは無理というものでしょうけど。しかし、例えば『ジャム』の、主人公の少年の父親が三人に増える不思議な現象などの奇想はなかなか素人では思い付かないものでしょう。他の作品は何となく先が読めたり、あまり紆余曲折が無かったりしますが、丁寧な描写で静かに時間が流れるうちに読み終わってしまうような、そんなひと時を過ごせます。それで十分じゃないですかね。

3レコード表示中です 書評