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ミステリの祭典

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君待秋ラは透きとおる

作家 詠坂雄二
出版日2019年06月
平均点5.67点
書評数3人

No.3 6点 SU
(2024/03/11 21:44登録)
君待秋ラは、任意の対象を透明化する能力を持っていた。そんな彼女に接触を図るのは、国家の特別組織「日本特別技能振興会」。彼らの目的は何か。
手から鉄筋を生み出す匿技師と秋ラのバトルから始まり、幾度も異能バトルが繰り広げられる。だが本書の特色は、超現実的な匿技にも何らかの科学的説明が試みられているところにある。特に秋ラの透明化に関するロジックは秀逸。
そして後半に入ると、一人の謎めいた老女をめぐって、戦後日本史の裏面を絡めた伝奇色とともに本格ミステリ色を濃くしてゆく。作者らしいユニークで彩られた作品。

No.2 6点 人並由真
(2020/01/21 02:25登録)
(ネタバレなし)
 横山光輝作品『地球ナンバーV7』あたりの雰囲気に近いエスパーバトルもの。19歳の女子大生エスパーが主人公で、その超能力ゆえに双子の弟の人生を狂わせた彼女自身のトラウマを軸とした、青春ドラマの要素もある。
 21世紀風の文芸で装飾してはあるものの、基本的には古い感じの作劇で、1960年代の「ボーイズライフ」とかに平井和正や矢野徹がこんなのを書いていたとしても全く違和感はない。
 ただし後半、SFミステリ的な要素が導入されて意外な襲撃者の正体、さらに事態の奥のどんでん返し……などの趣向を盛り込んであるのは、現代のエンターテインメントとして一応の水準を保った感じ。
 それでも作者が割と得意がって書いているような部分が、これまであちこちで見たような読んだような感じもする。そこはいささか減点。
 それなりに楽しめたけれど、とにかく20世紀後半のSFジュブナイルみたいに古めかしい。この古色さが、昭和ティストをあえて狙った感じみたいなスタイリッシュさに転じなかったのは、ちょっとキビシイところである。

No.1 5点 虫暮部
(2019/08/14 12:54登録)
 SF。特殊能力者を束ねる組織があれやこれや。
 超常現象の理屈付け方とか、細かなガジェットは悪くないが、全体としては凡作。前半ののほほんとしたムードと緊迫する後半とどちらも中途半端だし、何よりキャラが立っていない。秋ラと言う命名は徒に読みづらい。
 この作者には、もっと読者に対して挑戦的なものを書いて欲しいなぁ。

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