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ミステリの祭典

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予言の島

作家 澤村伊智
出版日2019年03月
平均点6.00点
書評数4人

No.4 6点 ミステリ初心者
(2024/01/13 19:55登録)
ネタバレをしております。

 クローズドサークルものだと思って購入しました。また、ヒキタの怨念があるという島の話であり、霊能力者が6人死ぬと予言をしたり、作中にも名前が出ますがw三津田や横溝ものの雰囲気を期待して買いましたw ただ、これはのちに、やや裏切られますw
 ミステリではありますが推理小説っぽい説明が長い文章ではなく、ホラーやサスペンス、あるいはパニック物のような楽しみ方ができます。読みやすくどんどんページが進みました。始めまホラーのテイストが濃く、怨霊の正体が明かされたことや沙千花の存在もあってホラー感が薄れていき、登場人物達のわだかまりがあらわになっていくサスペンスっぽくなっていきます。怨霊=硫黄ガスから逃げる描写はパニック物さながらのスピード感と緊張でしたね。
 このまま推理小説的要素が薄いままで終わるのかと思いきや、ラストはちゃんと推理小説としての驚きどドンデン返し、叙述トリックが待ち受けていました。読み返すのも楽しい作品です。ただ、ちょっとだけ後味が悪くはなってしまいましたねw

 推理小説的要素について。
 一人多い系叙述トリックでした。私は本作品をいれて、6作品目の一人多い系叙述トリック読了ですねw 実は、まったく見破れませんでしたw 
 とても多くの作品に書かれているトリックなので、トリック自体よりもそこに至るまでの伏線の張り方や個性的なアイディアが評価の基準になると思います。本作品はラストに書かれていた通り伏線は多く張っており、ただのトリックパクリ作品ではなくきちんと推理小説になっております。
 特にうまいと思ったのは2点あります。まず、宗作がたびたび敬語になっている点。ふつうは違和感しかないのですが、社畜時代の名残がでてしまうのかなと同情的になり見逃しましたw もう1点は登場人物の多くが関西地方のなまりがあり、女性と男性の区別がつきづらくなっている点ですね!
 ただ、既視感がつよい作品であることは変わりありません。淳の母が沙千花を殺す動機は、某有名作品の外れない予言の存在がある推理小説を見ているかのようでしたw

 総じて、読みやすい上に推理小説の醍醐味のドンデン返しを味わえる良い作品でした。同様のトリックを扱った他作品のほうが大きな個性があったため、やや薄味な印象になりましたが、小粒ながらうまいと思わせる隠し方や伏線もありました。

No.3 6点 パメル
(2022/09/05 09:08登録)
職場でのパワハラで心を病んだ幼なじみを励まそうと天宮淳は、もう一人の幼なじみの手配により、旅行に出ることにした。瀬戸内の小島に巣喰う怨霊と戦いに敗れた霊能者は死の直前、島で再び起きる惨劇を予言したという。その予言が当たるのかどうか、現地で確認しようというのだ。いささか不謹慎な動機で赴いた三人組は、この島で一夜のうちに六人が死ぬという趣旨の予言が的中していく様を体験することになる。
怨霊、呪い、予言。これらに支配されたような島という舞台と、その島民や島に縁のある登場人物たちを最大限に活用して作られている。作中で言及される霊能者が、冝保愛子と人気を二分した人物だったり、心霊写真といった懐かしいガジェットを駆使したり、あるいは迫り来る怨霊が引き起こすパニック劇を盛り込んだり、と往年のオカルト・心霊ブームを体験した人にはたまらない描写も多い。
これらを通して立ち上がってくるのがやはり、共同体を含む恐怖の源泉としての家(家族)だが、キャラクター描写が設定にとどまり、ドラマ面が型通りになってしまっているのは残念。

No.2 5点 雪の日
(2022/04/01 19:31登録)
ネタバレ気味です
向日葵の咲かない夏や、ハサミ男、など他にはメフィスト賞作品が好きな人は楽しめると思います。

No.1 7点 人並由真
(2019/11/12 18:12登録)
(ネタバレなし)
 1990年代半ばまで全国の人々から支持を集めた人気霊能者・宇津木幽子。彼女はその晩年に瀬戸内海の孤島・霧久井(むくい)島を訪れ、そこで自分の死からおよそ20年後に、この地で6人の命が失われるだろうという怪しく不吉な予言を残した。やがて時は流れて2017年。駄菓子メーカーの社員で30代後半の独身男・天宮淳は少年時代に幽子の活躍に胸躍らせた記憶があり、興味本位から旧友の大原宗作たちを誘ってかの霧久井島へ向かう。だが現在の島は過疎化が進んでほとんど老人たちばかり暮らしており、さらに島の怨霊「疋田」の伝承までが聞えてきた。そしてその夜、島内では、殺人事件が発生して……。

 本サイトでも先に「本格」ジャンルで登録されていたし、帯にも著者初のミステリという主旨の文言が書いてあるけど、読み進むうちにこれ、小説の形質&構造としては、今までの澤村作品同様にホラーカテゴリでいいんでないの? と考えた。最終的にスーパーナチュラルな要素が劇中に登場するかどうかはともかくとしても。
 ……で。
 まあこれも、あんまりナニも言わない方がいい作品だろう。
 ただ、フツー程度に今年、国産ミステリの話題作を追っかけている現在進行形のミステリファンは本作を読みおえたときに、きっとあれこれ思うことがあるだろうな(汗・笑)。

 作者のレギュラーキャラである比嘉姉妹とその関係者はいっさい出ない、完全な単発編。だから本書が作者の著書はじめてという人でも、その意味で問題はない。もしも興味があるのなら、早めに読んじゃった方がいいかもね?

 なお自分のジャンル投票はあれこれ考えて「ホラー」に一票。サスペンスでもいいかもしれない。本格では絶対にないと思うぞ。

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