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ミステリの祭典

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謎解きのスケッチ
ダン・パードウ警部

作家 ドロシー・ボワーズ
出版日2018年06月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 5点 人並由真
(2021/01/12 03:06登録)
(ネタバレなし)
 1930年代の末~1940年頃の、第二次世界大戦の緊張が本格化し始めた時局のイギリス。新人外交官の青年アーチー・ミットフォールドがある夜、何者かに殺害された。ミットフォールドはその少し前から、何者かに繰り返し殺されかけていると表明。かたや彼は生前、種別もよくわからない鳥のスケッチを、なぜかいくつも描き残していた。スコットランドヤードのダン・パルドー警部がこの事件の捜査に乗り出すが、それと前後してアマチュア探偵を気取るミットフォールドは、いま英国で話題になっている<富豪サンプソン・ビックの失踪事件>に関心を見せていたことが明らかになってくる。

 1940年の英国作品。
 初読みの作者で、論創で先に出た同じシリーズの既訳の分は読んでいない。
 マイナーな出版社からクラシックミステリの新訳発掘がかなり安い値段(ソフトカバーで1300円+税)で出たので、これは買っておかなければあとで後悔する? と思って、書籍版を3年前の刊行時に購入した。それで買って安心してそのまま昨日まで積読にしていたが、そろそろ読んでみるかと手にとってみる。

 内容は、すごい地味な作風。第二次大戦の影が迫る時代の空気は非常によく書けており、1940年に刊行という原書がその年の年初に出たのか、年末の発売だったのかしらない。が、1940年といえば、ナチスドイツが欧州の各国に侵攻、占領していた時期で、数か月単位で戦局もかなり変わってくる。実際、作中でも英国国内の有志・親独グループが解散したなどという話題も出てきて、さぞ微妙な時期だったのだろうと窺える。
 一方で肝心のミステリとしては、ミスリードを狙う手掛かりや伏線が豊富に準備され、それが相乗的に効果を上げればいいのだが、逆に謎の興味への訴求を相殺しあっている感じ。
 正直、前半、中盤、後半と、全体的に、平板というのではなく、それなりに高い物語の山脈が起伏も無く続いていくようで、緊張感が生じずに退屈であった。
 クライマックス、真相が明かされてからはちょっと面白くなったが、一方でそうなるとまた<その事実>に至った状況が説明不足で、なんかモヤモヤ。
 ……結局(中略)の(中略)って?

 題名になった鳥のスケッチの要素もふくめて、もっと面白くなりそうな気配はいくつもあったのだけれど、話の整理と演出に失敗した一冊。
 同じ英国のクラシック系でいえば、ロラックの諸作あたりに近いかも。

No.1 6点 nukkam
(2019/05/06 18:11登録)
(ネタバレなしです) 1940年発表のダン・パードウ警部(本書の風詠社版ではパルドー警部と表記されてます)シリーズ第3作の本格派推理小説です。控え目な描写ながら第二次世界大戦の影響が滲み出ています。謎解きが好きな若者が登場するのでパードウ警部とアマチュア探偵の推理競演になるかと思っていたらこの若者は早々と殺されてしまいます。既に何度か生命の危機を潜り抜けていた被害者は用心したのでしょう、残された言動や手掛かりは非常に謎めいていて容易に真相が掴めません。鳥のスケッチが手掛かりの一つというのもユニークで(残念ながらイラスト紹介はなし)、この謎解きはマニアックな知識が必要なので一般読者には難易度が高過ぎると思いますが決してダイイングメッセージ一発の謎解きではなく、それ以外の手掛かりもちゃんとパードウ警部が説明してくれます。

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