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ミステリの祭典

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いつかの人質

作家 芦沢央
出版日2015年12月
平均点4.33点
書評数3人

No.3 5点 ぷちレコード
(2023/07/30 22:21登録)
三歳の時に連れ去られた宮下愛子は、ほどなく自宅に戻れたものの、その時の怪我で視力を失ってしまう。それでも、両親の庇護のもと、健やかに育っていた愛子だったが、初めて親の介助なしに友人同士で出掛けたアイドルのコンサート会場から、またしても何者かに連れ去られてしまう。折しも、それは十二年前、愛子を連れ去った犯人の娘で、今は漫画家となっている江間優奈が、夫の礼遠とともに宮下家を訪れた後のことだった。
愛子の誘拐事件を追う過程で、優奈が失踪していることが明らかになる。物語は、愛子を誘拐した犯人捜し、礼遠の優奈捜しを並行して描いていく。二つの謎がたどり着く先は、何処なのか。メインのストーリーはミステリなのだが、根底にあるのは、愛子と家族の物語であり、優奈と礼遠の夫婦の物語である。
とりわけ、端から恵まれたカップルに見えていた優奈と礼遠の、その実は「すれ違ってしまう愛」が息苦しいまでに迫ってくる。

No.2 4点 メルカトル
(2019/12/06 22:11登録)
宮下愛子は幼い頃、偶発的に起きた誘拐事件に巻きこまれ失明してしまう。そして12年後、彼女は再び何者かに連れ去られる。いったい誰が、何の目的で?一方、人気慢画家の江間礼遠は突然失踪した妻、優奈の行方を必死に捜していた。優奈は誘拐事件の加害者の娘だった。長い歳月を経て再び起きた「被害者」と「加害者」の事件。偶然か、それとも…!?急展開する圧巻のラスト。大注目作家のサスペンス・ミステリー。
『BOOK』データベースより。

どうです、上記の内容紹介で興味を惹かれませんか?そう、私もそんな罠に嵌った一人です。プロット、ストーリーなどはそれほど悪いとは思いませんが、この小説には致命的な欠点が・・・。
誘拐物にしては、あまりそれらしい雰囲気が感じられません。誘拐事件自体よりも他に焦点を合わせている為、何か期待していてたものと違うと思われてなりません。二度も誘拐された少女、しかも失明しているという状況は当然サスペンス要素満載で、緊迫し盛り上がるものと信じていると裏切られますね。真犯人が途中で分かってしまうのも減点対象でしょう。もうこの人の小説は二度と読まないと思います。


【ネタバレ】


疑問其の一
いかなる手段で誘拐犯は被害者家族のプライベートを盗み聞きしていたのか。盗聴器でも仕掛けなければ無理ではないのか。詳細が書かれていません。

疑問其の二
失踪した妻を警察が本気で探してくれないからと言って、わざわざ誘拐犯に仕立て上げるでしょうか。そんなもの探偵でも雇えば速攻で解決するのに。夫であり誘拐犯のあまりに短絡的な思考に開いた口が塞がりません。

No.1 4点 HORNET
(2019/09/01 19:29登録)
 幼少時代に間違ってデパートから連れ去られ、失明してしまった愛子。時を経て再び、今度は本当に誘拐される。一方同じ時期に、過去の誘拐(連れ去り)班の娘である優奈が借金を残して失踪、夫である漫画家の礼遠は警察に捜索を依頼する。誘拐犯は優奈なのか?警察の捜査と礼遠の捜索で、次第に真相が見えてくる―

 真犯人とセットになっている「誘拐の動機」が本作のメインだが、むしろそのアアイデアを書きたかったから、無理やり肉付けをして一編に仕上げた、という印象。特に誘拐されている間の愛子への暴力は不要なはずで、ミスリードと物語をもたせるために無理な色付けをしたとしか思えない。
 無理に長編にせずに、「ネタもの」として短編ぐらいにすれば十分だった。

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