九尾の猫 エラリイ・クイーン |
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作家 | エラリイ・クイーン |
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出版日 | 1954年10月 |
平均点 | 7.09点 |
書評数 | 23人 |
No.3 | 8点 | Tetchy | |
(2010/06/13 21:31登録) 連続絞殺魔対名探偵。 これはパズラーでもなく、本格推理小説でもなく、もうほとんど冒険活劇である。クイーンが古典的本格ミステリから現代エンタテインメントへの脱皮を果たした作品だと云えよう。 しかしそんな特異な事件でもクイーンのロジックは冴え渡るのだから驚きだ。本書はエラリイのロジックはこのような無差別通り魔殺人事件にも通用するのかが表向きのテーマであろう。 誰が犯行を成しえたかを精緻なロジックで解き明かしてきたクイーンのシリーズが後期に入り、犯罪方法よりも犯人の動機に重きを置き、なぜ犯行に至ったかを心理学的アプローチで解き明かすように変化してきている。 しかしそれは犯人の切なる心理と同調し、時には自らの存在意義すらも否定するまでに心に傷を残す。しかし今回彼に救いの手を伸ばしたのが精神科医ベラ・セリグマン教授だった。最後の一行に書かれた彼がエラリイに告げる救いの言葉がせめてエラリイの心痛を和らげてくれることを祈ろう。 次の作品でエラリイがどのような心境で事件に挑むのか興味が尽きない。 |
No.2 | 7点 | E-BANKER | |
(2010/04/02 21:36登録) いわゆる「ミッシング・リンク」をテーマとした古典の代表作。 一見して全く関係がないと思われた多数の被害者をつなぐ”見えない輪”をエラリーが独特の嗅覚で探り当てます。 ただ、割と早い段階でこの「リンク」が判明してしまうところが玉に瑕。読者としては、もうちょっと終盤まで引っ張ってもらって、ラストで鮮やかに解決!という方がスッキリすると思うんですが・・・ 確かに、ラストでもう一捻りが控えているので、不満一辺倒ではないんですけどねぇ・・・ 動機はちょっと安直かなぁと思ってしまいます。 不満の多い書評ですが、それは期待の裏返しということで、良作なのは間違いないでしょう。 |
No.1 | 7点 | 空 | |
(2009/04/25 13:00登録) クイーンの全作品中、最も殺された人数が多い本作では、早々に「ABCの殺人理論」を持ち出してきて、クイーン警視にあっさり否定させることで、そのタイプではないことを示しています。被害者たちの隠された共通点は何か? これこそがミッシング・リンクということです(その意味では『ABC殺人事件』はミッシング・リンクではありません)。 大都会ニューヨーク全体を舞台にした恐怖の連続殺人が描かれる本作は、前作『十日間の不思議』以上にサスペンスが重視される一方パズラーからは遠ざかり、また名探偵エラリーの悩みも大きくなるという、重厚長大な読みごたえのある小説になっています。 |