タリスマン ジャック・ソーヤーシリーズ |
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作家 | スティーヴン・キング & ピーター・ストラウブ |
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出版日 | 1987年07月 |
平均点 | 5.33点 |
書評数 | 3人 |
No.3 | 6点 | 人並由真 | |
(2025/01/01 22:12登録) (ネタバレなし) 1981年9月のニューハンプシャー州。12歳の少年ジャック・ソーヤーは数年前に芸能エージェントだった父フィリップに急逝され、今は、末期癌に苦しむ母リリーを気にかけていた。リリーはかつて「リリー・キャヴァーノ」の芸名で鳴らしたB級映画の女優スターであり、夫フィリップの遺した成功したエージェント会社の経営権の相応部分を継承していたが、フィリップの同僚モーガン・スロートはその権利の譲渡を強引に求めていた。そんななか、ジャックは遊園地で雑役係を務める黒人の老人スピーディ・パーカーと友人になる。ジャックはそのスピーディから、現実と並行する異世界「テリトリー」に跳躍(フリップ)し、そこでアイテム「タリスマン」を入手すれば母を助ける可能性がある、と教えられた。だがテリトリーとこの世界、そして向こうの世界の住人たちとジャックたちこちらの世界の人間たちの間には、ある大きな相関があった。 1985年のアメリカ作品。 大晦日と元旦の年越しで何か長い作品を読もうとヤマッ気を出し、30日の深夜(31日の早朝)から読み始めて、文庫上下巻合計1000頁以上を元旦の21時台に読了。 キングはともかくストラウブの方は、これが初読のハズだ(評判がいいストラウブ作品『ジュリアの館』は、ほぼリアルタイムの刊行時期に、古書店で美本を700円で買ったはずだが、読もう読もうと思いつつ、その本の現物が見つからない・汗)。 でまあ、この『タリスマン』、面白いことは面白いんだけど、下巻の訳者あとがきで矢野浩三郎が書いてる通り、王道のロードムービー系ファンタジーの壮大なパロディみたいな内容の作品。 要は、この手のジャンルの豪勢な幕の内弁当みたいな作りなので、 ●うーん、いまひとつノリきれない……。 〇気が付いたら、他の歳末や新年の諸事も忘れて、貪るようにページをめくっていた! ……の二つの気分を、何度も何度も行き来した。 正に跳躍(笑・汗)。 ジャックが旅の道連れといっしょに途中のタコ部屋に閉じ込められるくだりとか、完全に日本アニメーションの「世界名作劇場」の『三千里』か『ペリーヌ』か『家なき子レミ』辺りの、やや過激版である。 (そのせいか、後半のクライマックスは疲れて、正直、やや眠くなった。) ただまあ、やっぱりトータルではウマいところもあるんだよね。最後のクライマックス、点描的にそれまでの道中で出会った善人やら悪人やらの描写を挿入し、(中略)の物語のスジを通すところなんか職人芸のエンターテインメントだし。 個人的に、長さの割にそれに見合う面白さがなかったキングの長編の筆頭は『IT(イット)』だと確信。この評価は終生変わらないんじゃないかと思っており、今回はもしかしたらソレに近い感触になるか? とも考えかけたが、そこまでヒドくはなかった。ただまあ、良くも悪くも定番のネタのオンパレード(当時にしても)だということは心得ながら、読むほうがいいと思う。 ちなみに続編は、21世紀になってから書かれた「ブラック・ハウス」(2001年)。現実世界で青年刑事になった(さらにそこから辞職までしている?)ジャックの物語みたいで、英語wikiに和訳をかけるとなんか面白そうである。本作の劇中設定を背景に、どのようなミステリになってるのか? そっちは読んでみたい。翻訳出ないかな。 【2025年1月2日追記】 『ブラック・ハウス』は、すでに翻訳出てたんですな。恥かしい(大汗)。 |
No.2 | 7点 | Tetchy | |
(2018/06/17 11:45登録) キングとストラウヴがその豊富なアイデアを惜しみもなく注ぎ込んだファンタジーとロードノヴェルとを見事に融合させた1000ページを超える大著。 2人が初めて共作した作品はいわば典型的なファンタジー小説と云えるだろう。女王の命を狙う敵から守るためにタリスマンを手に入れる旅に少年が旅立つ。 ただ異世界だけを舞台にしているのではなく、我々の住む現実世界とテリトリーと呼ばれる異世界とを行き来しながら冒険するところが特徴だ。 しかしこの設定も2018年現在では全く新しいものではない。むしろ現実世界と異世界を行き来する話は既にいくらでもあり、例えば現実世界とは地続きであるが、世界的大ベストセラーとなった『ハリー・ポッター』シリーズもまたその系譜に繋がるだろう。 またこの現実世界と異世界という設定は我々が日常で利用しているウェブ社会と考えれば親近性を持った設定である。分身者は即ち、今でいうアバターである。 ただ本書は1985年に書かれた作品である。当時はインターネットすらなく、パソコン通信の創成期といった時代である。キングとストラウヴ両者がこの新しい技術を当時知っていたかは不明だが、そんな時代にこのような二世界間を行き来する作品を描いていたことは実に興味深いし、先見性があると云えるだろう。 毒にも薬にもなる存在、タリスマン。私は核爆弾を象徴していると思った。癌に侵され、死にかけた母親を救うためにジャックが求めたのはこのタリスマン。強大な力を持つこの球体が核爆弾を象徴しているというのは荒唐無稽に思われるが、自分なりの解釈を以下に述べたい。 本書が書かれた1985年は各国が競って核爆弾を所有し、アメリカでは頻繁に核実験が行われていた頃だ。 他国が持っているから自国も所有して他国からの侵略に対して備え、安心しようとする。それは国にとっては防御力ともなるが、暴発すれば自国をも滅ぼす死の兵器である。そしてそれを各国が手放すことで真の平和が訪れる。そして黒い館に至る道のりにある焦土は火の玉が飛び交い、それに触れると放射能に侵されたような症状になることもまたそれを裏付けている。 しかしそのタリスマンこそが最後ジャックの母親の命を救い、そして消え去る。それは核による世界の浄化を示しているのではなく、やはり核の廃絶こそが世界を救うのだと考えたい。 ちょうど非核化対策が注目された米朝首脳による初会談の行われた時にこの作品を読んだからそう思ったのかもしれないが、いやそれだけではないだろう。私はまたも本に引き寄せられたのだ。 2人のホラーの大家がタッグを組んだ本書には物語を愛し、その力を信じる2人の情熱が込められている。色々書いたが、本書は愉しむが勝ち。それだけのアイデアが、多彩なイマジネーションが溢れている。そう、本書そのものがタリスマン―本を読む者へのお守りであり、読者を飽きさせない不思議な力を持っている。 |
No.1 | 3点 | ∠渉 | |
(2013/12/04 22:05登録) ファンタジーというジャンルの作品に対して、自分の想像力が追いつかなく、乏しい想像しかできなくなっていることを実感。そんな感じで読後の裏表紙(紹介文)見ると、「童心を失わない大人たちへのノスタルジアの贈り物」と書いてあり、自分の感性の磨耗に寂しさを感じた。ハリポタとか昔はすきだったのになぁ、みたいな。 ストーリィはよく練られたプロットというよりかは、とても自由に物語を紡いでいったような感じで、お二人の「一瞬の創造力」の豊かさを感じました。 キングらしい毒っ気はあまりなく、純度の高いファンタジーになっているので、童心を失ってはいない大人の方々は、ぜひ、読んでみては。 |