章の終り ナイジェル・ストレンジウェイズシリーズ |
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作家 | ニコラス・ブレイク |
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出版日 | 1958年01月 |
平均点 | 5.33点 |
書評数 | 3人 |
No.3 | 5点 | クリスティ再読 | |
(2024/10/23 21:13登録) 評者三大苦手作家の一角だね。 森村誠一、マーガレット・ミラー、ニコラス・ブレイク。共通点は何だろう...ヘンに意識過剰でユーモアを欠いた文章かな。イギリス教養派なら始祖のセイヤーズからイネスでもクリスピンでもPDジェイムズでも全然楽しめるんだけど、ブレイクだけはダメ。 いやほんと読んでて楽しくない。アリンガムの「判事への花束」に似た家族経営の出版社での殺人に、インテリ遊民的な探偵が介入する話。キャンピオン氏も別に魅力的とは思わんが、ナイジェル・ストレンジウェイズは....う〜ん、人間と思えない。非アマチュアで依頼を受けて動く私立探偵だけど、ヘンにインテリ。彫刻家の彼女アリでも、慇懃というかヨソヨソしいキャラ。顔が見えない。よくこんなキャラをヒーローにしたなあ(困惑) 事件も、被害者の過去とこの出版社の人々との過去の因縁が暴かれて、そんななかで動機もいろいろ浮上。とはいえ著作の「迫力」をネタに議論する部分とか、作者の背景から「やりたい!」ことなんだろうけども、こういうのを正面切ってやられると、ベタにしか思えないんだ。作者は有名詩人だから「自分は、できる、資格ある!」と思ってやったんだろうけども、読者としてはそれほどの面白みや説得力を感じるわけではない。やはりフィクションには、「フィクションの論理」や正義があるんだと思うんだ。 反発とか苦手感を自分で意識していると、逆に悪い点をつけづらい。5点で勘弁して。 |
No.2 | 5点 | nukkam | |
(2020/01/10 21:26登録) (ネタバレなしです) 1957年発表のナイジェル・ストレンジウェイズシリーズ第12作の本格派推理小説です。出版社を舞台にした1種のビブリオ・ミステリーですが、半世紀以上前の作品ですから本書で語られる出版業界描写が現代の出版業界とどれだけ相違点があるかは私には未知数です。ナイジェルへの依頼は原稿から削除されるはずの描写が何者かによって削除取消(イキ)の処理をされてそのまま出版、名誉毀損の訴訟に発展した事件の犯人探しです。ユニークな謎ですが長編ミステリーを支える謎としては弱いと思います。ブレイクよりはF・W・クロフツが扱いそうな企業犯罪の謎ですね(そういえば本書の出版年にクロフツが亡くなったのを思い出しました)。殺人事件がすぐに起きない展開ということもあって序盤の伏線は大概スルーされるでしょう。事件が起きてからも地味な展開に終始しており、推理説明はしっかりしているし動機に絡む心理分析が丁寧なのもこの作者らしいですが、やはりもう少し全体を盛り上げる工夫は欲しかったです。 |
No.1 | 6点 | 空 | |
(2011/10/05 22:19登録) ブレイクの作品は、ずいぶん前に例の『野獣死すべし』を読んだことがあるだけだったのですが、本作はそのような構成の工夫はない、普通のフーダニットです。 ノンフィクションを中心とした出版社が舞台ということで、目次は「組み始め」から始まり、「初校」だの「戻す」だのがあって「校了」で締めるという印刷業の言葉を集めているのですが、読んでみると内容が小見出しとうまくからんでいるというほどではありませんでした。 途中ストレンジウェイズとライト警部の間で交わされる推理は、ああも考えられる、こうも考えられるとやりあっていて、真相がどちらなのか、あるいは他に可能性はないのか、不明瞭なままに読者を放置します。犯人は一列に並んだ容疑者のうちの一人ということで、特に強烈なミスディレクションもないので、誰が犯人であってもさほど意外性はありません。それでも、捜査の展開はうまく、最後まで楽しませてくれました。最後の犯人に対する罠の意味も、さわやかにまとまっています。 |