home

ミステリの祭典

login
喪失のブルース

作家 シーナ・カマル
出版日2017年10月
平均点6.33点
書評数3人

No.3 7点
(2020/07/15 22:55登録)
ハードボイルドの探偵は違法行為も辞さない場合がかなりありますが、それでも暴行とか住居侵入がほとんどです。しかし本作で初登場したノラ・ワッツは平気で自動車を盗んだり(無断借用とも言えるかも)、人の誤解に付け込んで金を巻き上げたりと、窃盗をやりたい放題です。しかしそれも、彼女の生い立ちを考えれば納得できないこともありません。
この主人公は私立探偵と言うわけではなく、私立探偵とジャーナリストの調査助手をしているのですが、忘れてしまいたい自分の過去と正面から向き合わざるを得ない事件について独自に調査を始めることになります。
かなりご都合主義なところも見受けられるのですが、暗く重い雰囲気のせいか、それほど気になりません。昔はブルース系の歌手でもあった彼女が歌うシーンが2回。この最後の方の2回目は、実際にあったことを元にしているのではという気もしますが、迫力があります。

No.2 6点 びーじぇー
(2020/06/01 20:44登録)
主人公のノラ・ワッパはバンクーバーで人捜しを生業とする探偵。ある日、ノラはエヴァレットという男性からの電話を受けて呼び出される。エヴァレットの娘であるボニーが行方不明なので、探し出してほしいというのだ。
探す相手が生き別れた娘、という設定が失踪人捜しのプロットにひねりを与えている。事件に探偵自身の家族や過去が絡まってくる女性PIものという意味で、スー・グラフトンの<キンジー・ミルホーン>シリーズを思い起こす面もあるが、ノラはキンジーよりも破滅的で型破り。このキャラクターが暴れ出す後半の展開が、最大の見せ場といってよいだろう。
積極的な移民政策を進めるカナダでは、様々な出自の人間が街を行き交う。そうした多様性を持った社会の在り方を知る小説としても、本書を読む価値はある。

No.1 6点 猫サーカス
(2018/02/08 19:14登録)
厳しい過去を背負った女性が主人公のハードボイルド。幼くして里親の家を転々とし、路上生活も経験したノラ。野生の勘を頼りに人探しを請け負う今も、古傷をえぐるような事件に向き合うことに・・・。カナダの都市バンクーバーの美しい街並みの裏に潜む、社会の矛盾をえぐり出す。暗く重い物語だが、語り口の情緒が深い余韻を残す。

3レコード表示中です 書評