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ミステリの祭典

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パレートの誤算

作家 柚月裕子
出版日2014年10月
平均点5.67点
書評数3人

No.3 4点 バード
(2020/09/30 12:14登録)
生保というキャッチーな題材の事件を通し、主人公らが成長するストーリー。しかし、目の付け所や狙いはいいのだが、作者の実力が成熟しきっていないという感じだ。

<不満点、ネタバレあり>
・描写がくどい (登場人物の行動を書きすぎていると感じた。もっと削れるはず。)
・役割の薄いキャラが多い (同僚の美央や兄貴でも薄め。ぶっちゃけ、使い捨てが多すぎて個々のキャラ名が思い出せん。)
・ミスリードが弱い (一応、山川とヤクザの繋がりを匂わせる、小野寺に疑惑をかける、とミスリードを誘っているが、レベルが高いとは思えなかった。)
・タイトル回収が地味 (癖のあるタイトルなので、この点も期待していたが肩透かし。)

これらを改善すればグッと良くなると思った。とはいえ、嫌いな本ではない。全体的におしい。

No.2 5点 ボンボン
(2017/11/26 00:08登録)
人物も考え方もすべてがステレオタイプであることに嫌気が差して、途中で一旦白けてしまった。あまりに真面目過ぎる中学の学級委員の作文みたいだ(この喩え自体ステレオタイプか)。
しかし、そんな拙さが気になりながらも、興味が先へ先へと引っ張られ、一気に読んでしまう。サスペンス感は、まあ及第点。
真面目な若者たちが一生懸命頑張っている部分や、いかにもという人しか出てこない薄い女性陣には、お粗末な感じが否めない。その一方で、時たま現れる汚れ気味の男たちの方は、なかなかに味わい深い。マル暴の矢幡課長とヤクザの古参組員ポンキチのやり取りが一番面白かった。この著者のおじさん上手は相変わらずであることを確認し、読了。

No.1 8点 HORNET
(2017/09/24 13:41登録)
 物語の題材は、「生活保護受給者」。市役所の福祉課に勤める牧野聡美は、ケースワーカーとして受給者の定期訪問をすることになる。心の底には、生活保護受給者に嫌悪を抱いているからだ。しかしそんな聡美に、頼れる上司の山川は、「やりがいのある仕事だよ」と励ましの言葉をかける。尊敬する上司の言葉に背中を押された聡美だったが、その直後に、その山川が訪問先のアパートで不審な死を遂げる―

 生活保護、という昨今話題になているテーマを取り上げ、切り口としたのは素直に面白かった。ケースワーカーとして訪問する件では、受給者たちの横顔も描かれていて興味深い。「貧困ビジネス」と言われる、暴力団が受給者と結託してお金を得ようとする不正受給のことなども書かれ、制度の裏表がよくわかる。
 終盤の真相に迫る急展開のくだりで真犯人はわかったが、明らかになった真相から、山川の不審な行動についての説明もきちんとつけられ(腕時計のこと以外は…)、納得のいくものだった。
 かなり面白かった。

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