わざわざゾンビを殺す人間なんていない |
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作家 | 小林泰三 |
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出版日 | 2017年06月 |
平均点 | 5.00点 |
書評数 | 2人 |
No.2 | 5点 | メルカトル | |
(2021/03/02 22:37登録) 全人類がウイルスに侵され、死ねば誰もが活性化遺体になる世界。家畜ゾンビが施設で管理され、野良ゾンビが徘徊する日常のなか、とある細胞活性化研究者が、密室の中で突然ゾンビ化してしまう。彼はいつ死んだのか?どうやってゾンビになったのか?生者と死者の境目はどこだったのか?騒然とする現場にあらわれたのは、謎の探偵・八つ頭瑠璃。彼女とともに、物語は衝撃の真相が待ち受けるラストへと加速していく。世界もキャラクターもトリックも真相も予測不可!極上のゾンビ×ミステリー、開幕。 『BOOK』データベースより。 活性化遺体(ゾンビ)が普通に蔓延る世界、確かにその設定ありきの物語ではあります。これなくして密室殺人事件は起こり得なかったと言っても良いです。ですが、謎解きが終わっても何か釈然としないものが残りました。私の読解力のなさがなせる業であろうことは間違いないでしょうけれど。まあ作品の出来としては可もなく不可もなくといった所だと思います。もうこういった特異設定ミステリに慣れてしまって、特別目新しさを感じない体質になっているのもありますが、瑠璃の過去も含めてもう少し説得力のある、リアリティを感じさせるような物語に仕上げて欲しかったですね。 いきなり事件が起こるのは悪くないと思います。ただ、情景描写などほぼカットされていたり人物造形も形を成していないなど、アラが目立ちます。瑠璃の秘密にはおっと思いましたが、これもまた上手く誤魔化されたような感覚に陥り、本来なら驚愕する場面なのに素直に驚けなかったのは残念としか言いようがありませんでした。 |
No.1 | 5点 | HORNET | |
(2017/09/17 16:42登録) 人間が死後、活性化遺体=「ゾンビ」になるという現象がウイルスによって現実化し、蔓延しているという設定によるSFミステリ。 ある企業の、研究成果発表の場に、担当となっていた社員が現れない。すると別室から悲鳴が聞こえ、駆けつけてみると当の社員は「ゾンビ」になっていた―。ゾンビになったということは、直前にその社員は死んだということ。事故なのか?それとも事件=殺人なのか?図々しく警察の捜査に自ら首を突っ込む謎の探偵・八つ頭瑠璃が、身を賭して謎の解明に挑む―。 ・・・というように、虚構のSF世界を下敷きにしたフーダニット。真相・トリックがきちんと「ゾンビ世界」設定であるからこそ、になっているのはよかった。 ただ、昨今「これまでにない仕掛けのミステリを・・・」という意気込みからか、こうした特殊設定を生かしたネタの作品は多くて、Amazonその他で絶賛されているほど衝撃はなかったのが正直なところ。(ちょっと前に、白〇智〇の「お〇す〇人面〇」を読んでいたから、なんとなくダブったというのもある) ちょっとズレた会話を含むテンポの良い展開には好感がもてた。個人的には「ゾンビイーター」のリーダー格の女がかっこよかった。 描写はかなりグロいというか、気分悪くなるところもあるかも。 |