home

ミステリの祭典

login
22年目の告白-私が殺人犯です-

作家 浜口倫太郎
出版日2017年04月
平均点6.67点
書評数3人

No.3 6点 名探偵ジャパン
(2018/10/17 20:03登録)
興味深い設定と展開に引き込まれて、ほぼ一気読みしました。
映画が原作ということもあるのでしょうが、リアリティよりは盛り上げを優先したようなやりすぎな場面はありましたが、許容範囲です。
ただ、作者の本業が放送作家のためか、シリアスで重いテーマを扱っている割には、文章に軽さや拙さが見られる部分があったのも事実です。人物視点がころころ変わったりして少し混乱しました。プロの作家に書いてもらったほうがよかったのではないでしょうか(薬丸岳とか、テーマ的にもよいのではないかと)。

最後は一応、ハッピーエンドに落ち着いてはいるのですが、ひとつ言いたいことがあります。

※以下ネタバレがあります!



途中で主人公に愛想を尽かした元友人たちが、最後に戻って来る場面があるのですが、そこで「誤解が解けた」という意味のことが書かれているのはおかしい。
友人たちが主人公に愛想を尽かしたのは、「主人公が殺人犯が書いた手記を臆面もなく出版しようとした(そして実際にした)」からであって、その行動については完全に主人公の意思によるものでした(編集長に言いくるめられたのだとしても、最後に決定したのは自分の責任においてです)。
「誤解していた」のは主人公が殺人犯に対してであって、主人公と友人たちとの間には、そういった誤解は一切生じていなかったはずです。
言ってみれば、本気で殺すつもりでナイフを手にとって刺したけれど、そのナイフが実はおもちゃだったと分かったようなものです。この状況で刺された側が刺した側を「誤解だったね」と許すでしょうか?
ご都合主義にもなっていません。この友人たちはまるで、ハッピーエンドのために記憶を改竄されたかのようです。こういうのを「人間が描けていない」というのではないでしょうか。

No.2 7点 VOLKS
(2018/06/10 21:24登録)
昨年(2017)、話題となった映画が地上波初放送になったので検索したところ、原作は韓国映画、更には韓国で実際にあった事件がもとになっている、とか。
つまりこちらはノベライズ本。
でも、映画よりも断然楽しめた。
視点が変わったことによって、より描写が掘り下げられていて、細部も丁寧に描かれていた。
また、ラストの幕のひき方も小説の方がスマートで、救われる終わり方だったことも良かった。

No.1 7点 メルカトル
(2017/07/02 22:01登録)
映画のノベライズ本を読むのはいつ以来だろう。たぶん小学生の時に読んだ『明日に向かって撃て!』が最後だと記憶していますが。しかし、ノベライズだからと言ってバカにしたものでもありません。作り物めいた感じもしませんし、これが映画の原作本だと言われれば、十分に納得していたと思います。
正直面白いです。ページをめくる手が止まらないというのは、こういうことを言うのかというくらい、先の展開が気になるわ、読めないわでなかなか中断できません。
作者は『アゲイン』でポプラ社小説大賞特別賞を受賞しデビュー。放送作家として『ビーバップハイヒール』などを担当しています。本作を読む限り、かなりの実力者と見受けられます。読者を引き付ける文章を書くことに関しては、一流の腕を持った人です。私は寡聞にしてこの作者を知りませんでしたが、ほかにどんな作品を書いているのか興味を惹かれました。
内容に関しては触れるべきではないと判断しましたが、ただただ多くの方に読まれることを願うばかりです。
尚映画では出ていない主要登場人物が描かれているようで、その存在により作品の奥行きが広がっているように思います。その辺りは、映画のみに頼ることなく臨機応変に筆を進めていたのではないかと想像します。

3レコード表示中です 書評