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ミステリの祭典

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鸚鵡楼の惨劇

作家 真梨幸子
出版日2013年07月
平均点6.50点
書評数4人

No.4 6点 E-BANKER
(2025/09/15 13:26登録)
時々なぜか無性に読みたくなる。そんな作家が真梨幸子。なぜだろう?
まっ、理由は置いといて、作者の長編は久々のような気がする・・・
単行本は2013年の発表。

~1962年、西新宿・十ニ社の花街にある洋館「鸚鵡楼」で殺人事件が発生する。表向きは""料亭""となっているこの店では、いかがわしい商売が行われていた。時は流れ、バブル期の1991年。鸚鵡楼の跡地に建った超高級マンション「ベルヴェデーレ・パロット」で、人気エッセイストの蜂塚沙保里は誰もが羨むセレブライフを送っていた。しかし、彼女はある恐怖にとらわれている。「私の息子は犯罪者になるに違いない」――2013年まで半世紀にわたり、西新宿で繰り返し起きる忌まわしき事件。パズルのピースがはまるように、絡まり合うすべての謎が解けた瞬間、経験したことのない驚愕と恐怖に襲われる。中毒度200%!! ~

やはり、見事なリーダビリティだった。最近ではあまり経験しなくなっていた「ページをめくる手が止まらない」という感覚を久しぶりに味わった感じだ。
物語は終始”不穏な”空気に包まれたまま進行する。1962年、1991年、2006年と時代をまたがり事件が発生。2013年になってようやく解決を見ることとなる。
いずれの事件にも見え隠れする男。流行エッセイストという華々しいキャリアを持ちながら、かつて犯罪者を愛し、自身の子を愛するどころか恐れている女。世話好きなのに単調な仕事に頭を悩ませ続ける義妹・・・etr

登場する人物は、ひとりとしてまともではなく、どこかがねじ曲がっている。こういうのを「イヤミス」と呼ぶのかもしれないけど、物語がいったいどこへ向かうのか、全く読めない展開だった。
そして最後は解決編となるのだけれど、これはいささか帳尻合わせのようなものにはなっている。
置いてけぼりにされていた1962年の事件の伏線まで回収され、作者のミステリ作家としての矜持は感じるのだけど・・・
ここはちょっとマイナスポイントかな。

ただ、ひとことで言うなら「面白かった」作品。こんなに早く読了したのはホント久しぶり(2~3時間でほぼ一気読み)。
オリジナリティという面ではどうか?と思わんでもないけれど、いつも一定水準以上の満足感を覚えさせてくれる。
やはり、これからも時々「無性に」読みたくなる・・・に違いない。
(十二社ってそんな街だったんだね・・・初めて知った)

No.3 6点 メルカトル
(2023/10/24 22:15登録)
一九六二年、西新宿。十二社の花街に建つ洋館「鸚鵡楼」で惨殺事件が発生する。しかし、その記録は闇に葬られた。時は流れて、バブル全盛の一九九一年。鸚鵡楼の跡地に建った高級マンションでセレブライフを送る人気エッセイストの蜂塚沙保里は、強い恐怖にとらわれていた。「私は将来、息子に殺される」―それは、沙保里の人生唯一の汚点とも言える男の呪縛だった。二〇一三年まで半世にわたり、因縁の地で繰り返し起きる忌まわしき事件。その全貌が明らかになる時、驚愕と戦慄に襲われる!!
『BOOK』データベースより。

色々詰め込み過ぎて煩雑になるかと思いきや、年代順に追う様に構成されているので、混乱せずに済みました。勿論、作者のリーダビリティの高さもあるでしょう。これを本格と定義して良いのか、やや疑問に思いますが、混沌としながらも最後は関係者を集めて犯人を指摘するスタイルは、確かに本格です。

とにかく一言で語るのが難しい作品です。女性作家でありながら、ここまで踏み込んだ内容になっている辺りは流石イヤミスの女王の面目躍如と云ったところですね。
読後は何だかモヤモヤします。まだ終わり切っていない様な、もっとこの何とも言いようのないカオスに浸りたい様な、そんな感じがしました。

No.2 7点 ミステリーオタク
(2019/08/30 12:46登録)
さすがマリちゃん、読ませてくれる。
ただミステリーとしての完成度は初期の作品に比べて高くなっていると思うが、個人的には「フジコ」や「孤虫症」のような比類なき生臭さと絶大なリーダビリティをもう少し期待したかった。

No.1 7点 パンやん
(2017/05/19 04:28登録)
これぞ、真梨イヤミスの真骨頂!官能、ホラー、幼児性愛、猟奇的殺戮などこれでもかの波状描写も構成のうまさもあり実に楽しめる。あえてボカシてある不気味さ、モヤモヤ感もあり、もう思う存分嫌な読後を味わえますが、満足感にも浸れますぞ。

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