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ミステリの祭典

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ifの悲劇
桑原銀次郎

作家 浦賀和宏
出版日2017年04月
平均点5.67点
書評数3人

No.3 6点 メルカトル
(2019/05/31 22:42登録)
【ネタバレ注意 既読の方もしくは、今後本作を絶対読まないという方限定】

小説家の加納は、愛する妹の自殺に疑惑を感じていた。やがて妹の婚約者だった奥津の浮気が原因だと突き止め、奥津を呼び出して殺害。しかし偽装工作を終え戻る途中、加納の運転する車の目の前に男性が現れて…。ここから物語はふたつに分岐していく。A.男性を轢き殺してしまった場合、B.間一髪、男性を轢かずに済んだ場合。ふたつのパラレルワールドが鮮やかにひとつに結びつくとき、予測不能な衝撃の真実が明らかになる!
『BOOK』データベースより。

まさに想像の斜め上を行く、と言うより想像の真上を行く絶妙な仕掛け。これにはさすがに騙されました。
意外に単純なストーリーだと思いながら読んでいましたが、実はとんでもない食わせ者で、かなり複雑に入り組んだ話なので、読者はそれを覚悟の上で慎重に読み進めなければなりません。ただし、それ程面白い訳ではなく、なんとなく読み流していると後で後悔する羽目になるかもしれません。途中で違和感を覚え、それらを頼りに真相に迫ろうとし、そして作者の企みを見抜こうとする勇敢な読者にはハッとするような天啓が訪れる瞬間がやってくるかもしれませんね。

それにしても、誰もが「そっちかい」と思わず唸るようなエピローグには、それは違うんじゃないかとか、やり方が汚いとの意見も上がりそうですが、もう一度最初から読み直してみると、作者がいかに巧妙に騙しのテクニックを駆使しているかに気付くと思います。○○トリックや××トリックを上手い具合に仕込んだ、浦賀らしい(らしからぬ?)一篇ではないでしょうか。
読後腹を立てる人もいるかもしれませんが、個人的には満足しています、騙されたことに、そして見事な着地を見せた作者に対して。

No.2 6点 名探偵ジャパン
(2019/05/16 22:11登録)
角川文庫の書き下ろし作品なのですが、カバー裏のあらすじ紹介は二重の意味でいただけません。「それをばらすな」的なことと、本編を読了した段階で読み直すと、明らかな虚偽が書いているからです。
まあ、他に書きようがないという事情もあるのでしょうが、プロの編集者ならば何とかしてほしかったですね。

肝心の内容についてはというと、こういったタイプの作品は「技巧」が過ぎると、感心するばかりで、あまり「面白かった」という評価に繋がりづらい、ということが再認識できました。労多くて実入りが少ない、作家にとってあまり効率的でない仕事に思います。

No.1 5点 人並由真
(2018/03/19 17:09登録)
 文字通り&評点通り「まぁまぁ楽しめた」のだけれど、この作品に関しては、先行するBLOWさんのレビュー「やっぱりそこに着地するのかあ、と落胆。とんかつ屋に入ったらラーメンが出てきた、みたいな感じ」という一言が、ものの見事に作品の素性を語りきっていると思います。
 アニメ『正解するカド』終盤のポカーンぶりみたいじゃ。

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