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ミステリの祭典

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暗幕のゲルニカ

作家 原田マハ
出版日2016年03月
平均点5.67点
書評数3人

No.3 6点 ぷちレコード
(2021/09/02 23:12登録)
一枚の絵画をめぐって二つの時代を舞台に物語が進んでいく。特にピカソの生きた時代の描写は凄まじい。この時代に足を踏み入れたかのようなリアリティを感じさせるし、ゲルニカ誕生の背景にも思わず納得させられた。
美術の知識が無くても、ピカソの凄さや芸術の力が伝わってくる。過去と現代、生きる時間は違えど、芸術を武器に戦争に「NO」を突き付ける人々の姿に胸が熱くなる。

No.2 5点 makomako
(2020/04/12 08:26登録)
 私も楽園のカンヴァスが良かったのでこの本も読んでみたのですが、やはりこちらのほうがちょっと落ちるように思います。
 作者のピカソに対する思い入れは十分にわかるのですが、私のような絵画の門外漢にとってはゲルニカがそこまでの力があるかどうかは不明です。ちなみにスペインでゲルニカのホンモノをみましたし、ゲルニカへ行って町の記念碑のようになっているコンクリートでできたゲルニカも見てきましたが(その程度の関心はあるのです)、迫力を感じつつもアートが一番の力か否かはよくわかりませんでした。
 私にとって価値観の根本的なところで多少のずれがあるため、お話の内容への共感が十分ではありませんでした。勿論作者のこういった姿勢に反対するものではなくむしろ賛成に回りたいのですが、そこまでの情熱が出ないということなのでしょう。
 したがって評価もちょっと下がります。

No.1 6点
(2017/02/21 09:52登録)
絵画ミステリー作品、「楽園のカンヴァス」が新鮮で強烈だっただけに、本作には期待した。
(以下、ほんのわずかにネタバレ的)

ピカソの時代と現代の同時進行というスタイルは前作と同じ。
ピカソの話が1937-45年、現代の話は2001-3年で、わずか60年ぐらいしか離れていないのも前作と同じ。どんなミステリーなのか、序盤ではとにかく期待が高まっていく。

ピカソと言えば「ゲルニカ」。ゲルニカと言えば反戦のシンボル。
2001年9月11日と言えば同時多発テロ。それに続くイラクへの報復戦争。
両者のリンクは、物語のはじめのうちに明かしてしまっているから、それはそれでよしだが、そんな背景開示の後に現代で起こるゲルニカ絡みの事件が、いつまでたっても進展しないのにはやきもきする。
終盤に至ってサスペンスフルな展開へと変転していくが・・・

前作にくらべると、締まりがないなぁ。なんかガサガサしていて落ち着きもない。
2つの話はそれぞれでは面白いが、交互に同時進行すると、どうかなあという感じもする。
前作よりも大物感が強く、期待しすぎてしまったかな。ミステリーとしてはちょっと物足らない。
まあでも、登場人物の「ゲルニカ」への愛は存分に感じられたので、そこはよかった。
そんなレベルだろうか。

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