その雪と血を |
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作家 | ジョー・ネスボ |
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出版日 | 2016年10月 |
平均点 | 6.00点 |
書評数 | 3人 |
No.3 | 6点 | YMY | |
(2024/03/12 22:22登録) 暴力と隣り合わせの人生を歩まざるを得なかった殺し屋オーラヴは、二人の運命の女の間で孤独な魂を揺らつかせつつ乾坤一擲の賭けに出る。 これは、純白の雪と深紅の血に象徴される、不自然なまでに美しい暗黒叙事詩であると同時に、強く心を打つクリスマス・ストーリーでもある。愛と憎しみ、信頼と裏切り、献身と我欲が絡み合う凄惨なれど哀愁漂う贖罪と救済の物語だ。 |
No.2 | 6点 | 八二一 | |
(2020/10/23 20:06登録) 主人公の無垢で純粋な美しさと残酷さ、そしてラストシーンの鮮やかさと切なさが胸に残る。 |
No.1 | 6点 | 人並由真 | |
(2017/01/23 18:05登録) (ネタバレなし) 1977年12月のノルウェーのオスロ。「おれ」ことオーラヴ・ヨハンセンは、地元の麻薬売人の大物ダニエル・ホフマンと契約した「始末屋」(殺し屋)として4年目の冬を迎えていた。オーラヴは女に惚れっぽいという自覚があり、最近も、耳と口の不自由な娘マリアが、ジャンキーの彼氏の借金のカタに売春を強要されかける現場を認め、衝動的にその危機を救っていた。そんな近況のオーラヴのもとに、ホフマンから、彼の妻コリナを始末しろという指示がある。オーラヴが下準備としてコリナを見張ると美貌の彼女には若い年下の不倫相手がおり、しかもその男はコリナを虐待、折檻しながら相手を抱く趣味のようだった。コリナに情を抱いたオーラヴは自分の考えで、ホフマンから依頼された今回の件に決着をつけようとするが…。 2016年のポケミス新刊で、原書は2015年の刊行。ネスボ作品は初めてだが、今年度の「このミス」やwebで話題になっていたので読んでみた。それでたまたま実際の翻訳を手に取るまでその事実は知らなかったのだが、なんと本文全体が一段組のポケミス! これまで数百冊ポケミスを読んできたが、イントロ部分や解説は別に本文そのものが一段組というポケミスの事例は皆無のハズでこれは驚いた!(それでも、もしすでに先行例があったらスミマセン。) 現状の仕様で全186ページと短めだし、もし普通に二段組みのレイアウトだったら、スピレインの『明日よ、さらば』の薄さを超えたのかな…そんなどうでもいいことを考えながら読み進める(笑)。 本作は解説によると、現代作家のネスボが<70年代の架空の寡作作家の旧作を発掘した>というスタイルで書いた当時の時制と世相を背景にしたノワールもの。要はボワロー&ナルスジャックの<贋作ルパン>みたいな偽発掘の趣向である。 前述のように文字の総量は決して多くないが、主人公オーラヴの内面描写も交えた一人称を基軸に綴られるノワールドラマ(一部、三人称の叙述も混淆する)は独特の情感に富み、最後まで時にスリリングに時に渋く切なく一気に読ませる。ストーリーそのものも一部、先に読める箇所はあるが、無駄のない展開を起伏豊かに披露して、その意味でも出来はいい。 (まあ良い作品とは思うけれど、昔なら確実に、ポケミスではなく、ソフトカバーのハヤカワノベルズの方に回ったろうなという感じの一冊だが。) 重ねて、ネスボ作品は初読の筆者だが、確かに小説はうまい、と実感。特に最後の二章の、ちょっとだけ技巧的なクロージングは心に滲みる。寒いこの冬の間に読んでおきたい秀作。 とまれ評点は7点にしようか迷ったけど、良くも悪くも70年代の過去時制というより、もっと古い禁酒法時代のノワールみたいな気分もあるので、そのふんわかな気分を斟酌して6点。そういうクラシックな雰囲気がまた、ある種の魅力でもあるんだけどね。 なお解説を読むと、同じ世界観の姉妹編的な作品もあるみたいなので、そっちも翻訳してもらいたい。 |