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ミステリの祭典

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白衣の嘘

作家 長岡弘樹
出版日2016年09月
平均点4.33点
書評数3人

No.3 5点 E-BANKER
(2019/03/10 21:39登録)
~医療の現場を舞台に描き出す、鮮やかな謎と予想外の結末。名手による傑作ミステリー集~
ということで、「傍聞き」「教場シリーズ」で著名となった短編の名手(?)の作品。
2016年発表。

①「最後の良薬」=問題の多い女性入院患者を担当することになった医師。その入院患者と接するうち、あることに気付く。そして思わぬラスト・・・。いくら人材不足とは言え現実の医療現場でそんなことがあり得るのかは大いに疑問。
②「涙の成分比」=医師の姉とバレーボール日本代表の妹。ふたりが車中で遭遇したトンネル落盤事故。脚の半分を失った妹を気遣う姉もまた・・・。なにも二人揃って不幸にならなくても、って思ってるうち、ラストは微かな光が射す。
③「小医は病を医し」=タイトルは中国の諺(らしい)。これって、どこまで真実を見抜いての行動なのかが今ひとつ分からず。でも、確かに大きな病院って迷路みたいだよね。(嘘をつき通しても良かったんじゃない、って個人的には思ってしまった)
④「ステップ・バイ・ステップ」=これも③と同じベクトルの作品。医療現場の裏側で別の犯罪が・・・っていう展開なんだけど、こんな回りくどい示唆の方法しかなかったのかという疑問を感じずにはいられない。
⑤「彼岸の坂道」=主任の地位を競い合うライバルふたり。その任命権を持つ上司が不慮の事故に遭う。そしてラストは思わず真実が・・・。うーん何か地味。
⑥「小さな約束」=刑事の姉と新米警官の弟。姉が腎疾患で入院するなかで知り合った青年医師。医師と弟で磯釣りで出掛けた最中に大事故が起こる! これも三たび医療現場の裏側で別の犯罪が!っていう展開。

以上6編。
作品トータルでみて、ひとことで評価するなら「旨い」ということになる。
でもこの「旨い」がイコール「面白い」にはつながっていない。
他の方も書かれているけど、どうにも無理矢理感が強すぎるんだろう。
プロットをこね回しすぎてるというか、意外なラストのために登場人物の行動がどうにも不自然になっている。

短篇だから、ワンアイデアの切れ味勝負になるのは当然なんだけど、日本刀やナイフでスパっと切るという感じではない。
良く練られてるし、ツボは押さえてるんだけどね・・・
そういう意味では惜しい作品。

No.2 4点 猫サーカス
(2017/10/23 19:26登録)
命をテーマにした6編からなる医療ミステリ。いずれも劇的な展開をたどり、意外な真相が明らかになる。特に「涙の成分比」は温かな余韻に包まれる。人物の内面のリアルな葛藤よりも、アイデアやトリックを優先しているので、いささか人工的に見えるところもある。ただ本格ミステリ志向の作者の場合、人工的とは独創的の意味であって、果敢な挑戦をしている?と思いたい。

No.1 4点 まさむね
(2017/01/26 22:04登録)
 タイトルから想像できるように、全て医師が登場する短編集。
 「珠玉のミステリ六編」的に紹介されている本書ですが、珠玉かどうかはかなり疑問。決してイイ話ばかりではないのだけれども、何というか綺麗に纏めようとし過ぎているというか、綺麗にしようという努力感が出過ぎているような…。結果的に、登場人物の種々の行動に対して「いやいや、やらんでしょ、普通は」と感じてしまい、人間性を描こうとして、逆に人間性が滲み出ない、作りモノ感を強めている気がします。
 スマッシュヒットとなった「傍聞き」の印象が強く、個人的に期待値を高めに設定し過ぎているのかもしれませんが、採点としては4~5点レベル。同じような印象を前作「赤い刻印」の書評でも述べた記憶があるので、ちょっと厳しいかもしれないけれども、今回は端数切捨てのこの点数で。

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