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ミステリの祭典

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ハイキャッスル屋敷の死
キャロラス・ディーン

作家 レオ・ブルース
出版日2016年09月
平均点5.33点
書評数3人

No.3 5点 E-BANKER
(2017/05/22 21:22登録)
キャロラス・ディーンシリーズの第五長編となる本作。
1958年発表。

~キャロラス・ディーンはゴリンジャー校長から直々に事件捜査の依頼を受ける。校長の友人である貴族のロード・ベンジが謎の脅迫者に命を狙われているというのだ。さらに数日後の夜、ロード・ベンジの住むハイキャッスル屋敷で、主人のオーヴァーを着けて森を歩いていた秘書が射殺される事件が発生。不承不承、現地に赴くキャロラスだったが・・・。捜査の進捗につれて次第に懊悩を深める探偵がやがて指摘する事件の驚くべき真相とは?~

このシリーズも「死の扉」「ミンコット荘に死す」に続いて三冊目。
他の方も書かれているとおり、端正な英国本格の香りを残したシリーズとして好ましいことは好ましい。
それは確かだろう。

本作は、「お屋敷」を舞台に、不穏な空気感や“間違い殺人”、外部にいる謎の人物など、いかにもというレッド・ヘリングがそこかしこに撒かれている。
終章では、犯人足り得る「十三の条件」なるものまで登場し、消去法による鮮やかな真犯人解明!
これぞ本格ファン垂涎のミステリー! となるはずなのだが・・・
そうはいかなかった。

クイーンを意識したかどうかよく分からないけど、真犯人特定のプロセスはロジックというよりは直感に頼ったものっぽい。
その辺りは、巻末解説の真田氏も「ミステリーとしての出来栄えを手放しで賞賛するわけにはいかない」と指摘されているとおりだろう。
(手放しで褒める解説者が多いけど、なかなか正直なお方!)
意外な真犯人を狙ったであろうフーダニットについても、中盤あたりからその臭いがプンプンしていたと感じる読者も多いに違いない。

というわけで、やや肩透かしという読後感になってしまったけど、雰囲気自体は決して嫌いではない。
キャロラスが真相解明を渋った理由が今ひとつ分からないけど、この頃の探偵役ってもったいぶる奴が多かったからね。
英国人らしい奥ゆかしさっていうことかも。

No.2 6点 kanamori
(2016/09/24 10:21登録)
パブリック・スクールの歴史教師で素人探偵のキャロラス・ディーン登場の、シリーズ第5作(1958年発表)。
レオ・ブルースは、ポスト黄金時代のニコラス・ブレイクやマイケル・イネスとほぼ同時代の作家ですが、文学性や教養主義がミステリを薄味にしていると感じることもある”英国新本格派”とは一味違って、(邦訳された作品だけで見ると)純粋に本格パズラーに傾注した作風が好ましいです。作品個別のクオリティは別にして、クリスチアナ・ブランドに対する”黄金時代最後の末裔”(© 森事典)という称号は、レオ・ブルースにも通じるのではと思います(ちょっと持ち上げ過ぎかも?)。とくに本作は、お屋敷モノ、探偵役の聞き込み調査、関係者を一堂に集めた謎解き披露の大団円と、黄金時代の本格ミステリのオマージュ風味が強く感じられます。
”燻製のニシン”を初めとした加工食品の製造販売の成功で財を成した成り上がり貴族の広大な屋敷が舞台なだけに、まかれたレッドヘリングの数が半端ないですw  ただ、これまでの作品を読んで作者の手筋に通じていると、今回の事件の構図はやや判りやすいかなと思います。また、ルパート少年などレギュラー陣の登場が少ないのでユーモアは控えめですが、多くの使用人など端役の登場人物が個性的に描かれていて作者の持ち味はでています。
あと、レオ・ブルースの作風の特徴と本作を詳細に分析した真田啓介氏による巻末解説が素晴らしいです。何となくぼんやりと考えていた点を全て指摘されていてスッキリしました。

No.1 5点 nukkam
(2016/09/23 01:42登録)
(ネタバレなしです) 1958年発表のキャロラス・ディーンシリーズ第5作の本格派推理小説は古きよき時代へのオマ-ジュとして書かれたのでしょうか。貴族の屋敷を舞台にして数々の豪華な食事や行き届いたサ-ビスにとまどい気味のキャロラスが描かれています(使用人の数が半端ではありません)。オマージュといえば本書はかなりエラリー・クイーンを意識したように思えるところが散見されます。キャロラスが13の手掛かりを挙げて犯人を指摘する場面は初期のクイーンを彷彿させますが、それ以上に印象に残るのはまだ中盤の12章の終わりでキャロラスは真相を見抜いたらしいのにそこから解決に至るまでにやたらもたもたしていることです。そうなった理由はクイーンの1940年代の作品を連想させます。真相を証明する証拠を意外な人物が握っていたという設定は作者のオリジナリティを感じさせます。

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