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ミステリの祭典

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ラメルノエリキサ

作家 渡辺優
出版日2016年02月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 7点 虫暮部
(2023/07/07 12:22登録)
 あの娘は出来の良い人形を見ているよう(肯定的な意味で)だが、腰を抜かしたりして生身とのハイブリッドだったので安心した。
 うーむ、復讐ってこういうパキッとしたものかなぁ? 考え方は色々あって、私は “リアリティの無さが却ってリアル” みたいな捉え方しか出来ない。すっきりしたのは確かだけれども。

No.1 6点 人並由真
(2016/07/07 04:10登録)
(ネタバレなし)
 正義とか良心とかとは無縁の部分で、幼少の頃から復讐という行為に病的なまでに執着し、16歳の現在、己を「復讐の申し子」と自認する「私」こと美少女高校生・小峰りな。そんな彼女はある夜、何者かに路上で斬りつけられ、胴体に裂傷を負う。素性不明の犯人が逃げる前に言い残したのは「ラメルノエリキサ」という謎の言葉。りなはそのキーワードを手掛かりに、決然と復讐の対象としてその犯人の正体を捜すが、やがて第二の事件と思しき事態が発生して…。

 第28回小説すばる新人賞の受賞作で、腰巻には「“復讐”をモットーに生きる少女が失踪する、痛快青春ミステリ!」とあり、宮部みゆきも賛辞を寄せている。

 ジャンルをあえて分類するなら、一応のフーダニットとホワイダニットの要素をそなえた青春小説で悪漢小説とも呼べる広義のミステリ。本の体裁は大きめの級数で180ページ前後の文芸本だから、読了までにそんなに時間はかからない。ただ紙幅がその程度、登場人物も名前が出る者だけで15人程度と少なめながら、その割にはなかなかこってりした感触を残す。その意味では悪くなかった。
 相応の求心力とインパクトはある主人公だが、一方でシンクロできない読者も多いんじゃないかな、と思う。筆者はもうちょっと続編でも付き合ってみたい、という程度には魅力を感じたけれどね。
 しかし作者が一番描きたかったのは、終盤に明らかになるお姉ちゃんの心情じゃないかな。そのかなり微妙な心持ちのありようは、個人的にもストンと落ちるわ。

 でもって肝心のミステリとして総評するなら、惜しくもその点においてはやや薄味…とも一度は書こうと思ったが、このweb時代に<検索してもわからない言葉「ラメルノエリキサ」の謎>というネタをひとつの柱にしたのは、ちょっとした創意かもしれない。あと犯人の動機の謎も真相がわかったのち、主人公のキャラクターにうまいことからんできてもいる。そう考えていくと、そんなに悪くないね。
 評点はほんのちょっとだけおまけして6点。同じ主人公の続編が数年後に出たらまた読んでみたい、とも思う(少し間を置いて書いてほしい。劇中時間そのものは、そんなに経過しなくてもいいけれど)。 

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