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ミステリの祭典

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未明の家
建築探偵シリーズ

作家 篠田真由美
出版日1994年09月
平均点6.67点
書評数3人

No.3 7点 Tetchy
(2010/06/22 22:09登録)
第1作目ということもあり、起こる事件やキャラクターは実に類型的と云えるだろう。
探偵役の桜井は朝に弱く、建築に造詣の深く、しかも大抵のことでは動じず、しかも通常長い前髪で覆いかぶされている顔は類稀なる美貌を放つ美男子ぶりという、なんとも少女漫画的な設定だ。

本作がそれでも特色を放っているのはやはりサブタイトルにも掲げられているように桜井が建築探偵というところだろう。事件そのものよりも対象となる館そのものこそが桜井の関心の対象なのだ。したがって人の生死に関わる事件は二の次で館に秘められた設計者、住居者の思い、建築の意図を推理する。そのことによって殺人事件の犯人が炙り出されるという間接的な事件真相へのアプローチが成されているのが最たる特徴だろう。

また作者の得意とする歴史を絡めているところにこの作家のこだわりを感じる。歴が若かりし頃に渡ったスペインで起きたスペイン革命と歴の運命を絡め、秘められたロマンスを演出している。う~ん、革命を背景に叶わぬ恋とは、これはまさに『ベルばら』の世界だ。やっぱりこの作家、自覚していないようだが少女マンガ的設定を盛り込む遺伝子を持っているのだ。

No.2 7点 nukkam
(2009/04/07 17:47登録)
(ネタバレなしです) 1994年に発表された本書は記念すべき建築探偵桜井京介シリーズ第1作です。笠井潔による講談社文庫版巻末解説によればこの作者は「第三の波」の「第二世代」に所属する作家のようですが、王道的な本格派推理小説にこだわった第一世代作家の作品と違い、本格派推理小説といってもやや毛色が異なります。その解説の表現を借りれば、桜井京介と準主人公3人(本書では2人が活躍)による「血縁関係のない家族」のようなドラマが最大の魅力で、他の誰にも真似できない作品世界を築き上げています。その特長は本書でも十分に発揮されています。謎解きもやってはいますがむしろ家族問題をどうまとめるかにかなり力を入れています。容疑者たちの人物描写も繊細で、謎解きもホワイダニットに重点を置いたものです。建築の謎解きも家屋の特殊な構造や奇抜な仕掛けに頼っていないところにユニークさを感じさせます。

No.1 6点 vivi
(2007/12/22 02:40登録)
パティオを持つスペイン風洋館での不可解事件。
トリック的には今ひとつな感じではありますが、
この後も何かありそうなキャラクターたちの装いが、
非常に興味深い作品でもあります。

先入観なしに読むといい作品かもしれません。
「ことば」の恐ろしさを再認識する作品でもありました。

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