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ミステリの祭典

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ノエル: -a story of stories-

作家 道尾秀介
出版日2012年09月
平均点5.67点
書評数3人

No.3 7点 斎藤警部
(2020/02/05 12:00登録)
にぎっては出しのホヮットダニット反転やら叙述トリック連発やらまるで短篇連作の如くに惜し気なく奔出。でも本作は短篇的パートに分かれた長篇。後に進むほど『童話部分』の良さと意味合いが押し寄せて来る。ストーリーそのものが臨界面で連関すると言うより、ストーリーに登場する人物たちの人生が点で連関する、同じ連作短篇的長篇でもワンクッション含んだ感覚。てか、だからこそ連作短篇ではなく長篇の体裁なのか? それにしては叙述の小技が光り過ぎな気も若干するが、いいさ。 最後に近づくにつれ、ストーリーの織り成すハーモニーのあまりの美しさに、ペンタトニックスが髭男の勢いでカバーしてくれないかと思ってみたりもする(あのバンドとこの作者は雰囲気似てる気が)。まあエピローグは出自的に、「三題噺」をまとめたようでもありますが…その効果は大きい。 ところで、第一話の微妙に不吉なエンディングって、もしかして回収せず?(おいらの読み落としか?)

No.2 6点 まさむね
(2016/08/03 23:01登録)
 3編から成る連作短編集…と言うべきでしょうねぇ。
 最初の「光の箱」は、結構イイ。作者の企みに見事にハマった訳ですが、読後笑顔で「ちくしょう、やられたよ」って呟いてしまうタイプの作品。(逆にこのタイプが好きではない方もいらっしゃると思いますが。)これ単体であれば、もっと高得点。
 で、他の2作品ですが、最初の作品から概ねパターンが想像できてしまうこともあり、インパクトは相当に落ちます。勿論、各話とも、また各話を繋ぐ全体構成としても、綺麗に収束させているのですが、優等生的すぎて、イマイチ引っかからない印象もありました。
 「光の箱」は好きなんだけどなぁ…。

No.1 4点 E-BANKER
(2016/04/13 20:29登録)
2012年発表のノンシリーズ長編。
三つの物語が紡ぎ出す独特の旋律・・・といった雰囲気の作品。

~孤独と暴力に耐える日々のなか、級友の弥生から絵本作りに誘われた中学生の圭介。妹の誕生に複雑な思いを抱きつつ、主人公と会話するように童話の続きを書き始める小学生の莉子。妻に先立たれ、生きる意味を見失いながらボランティアで読み聞かせをする元教師の与沢。三人が紡いだ自分だけの<物語>は、哀しい現実を飛び越えていく・・・。最高の技巧に驚愕必至、傑作長編ミステリー~

紹介文には長編とうたっているが、世界観を共有しつつ緩やかにつながった三つのストーリーから成り立っている。
いわゆる連作短篇といっても差し支えない構成。
紹介文にはミステリーとうたっているが、これは本当にミステリーなのか?
どう読んでもファンタジー小説としか取れなかったのだが・・・
(謎の提示もなく、何かを解き明かしたわけでもなく、サスペンス的な展開もないのだから・・・)

まぁそれは置いといて・・・
本作で作者は何を言いたかったのか、何を伝えたかったのか?
「生きる喜び」なのか「人生というものの素晴らしさ、不思議さ」なのか?
哀しい現実に耐えている三人の主人公が、自分が創造した物語をとおして、確かな“何か”を得ていく・・・
う~ん
どうもありきたりのような気がしてならんなぁ・・・
三人ともそれほど不幸じゃないし、最終的にはハッピーになってるし・・・
やっぱり中途半端だ。

作者のことだから、当然うまくまとめているのだけど、正直なところ消化不良気味。
もう少し捻りや奥行きのある作品かと思っていたのだが・・・
やや期待はずれ。

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