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ミステリの祭典

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日本アルプス殺人事件
那須警部シリーズ

作家 森村誠一
出版日1977年05月
平均点6.00点
書評数3人

No.3 6点 E-BANKER
(2019/03/21 22:09登録)
作者が得意とするジャンルのひとつが“山岳ミステリー”。
その代表的作品といて挙げられるのが本作(恐らく)。
「週刊小説」連載後、1972年に単行本化して発表されたもの。

~北アルプス・槍ヶ岳の観光開発をめぐり、しのぎを削る若きエリート社員ー国井、村越、弓場。三人は福祉省・門脇局長への接近を図り、更に上高地で会った門脇の娘・美紀子の愛を得ようと争う。自分の会社に開発利権を導くために。しかし、彼女に最も近づいていた国井が殺害された。村越と弓場が容疑を掛けられるが・・・。捜査陣は鉄壁のアリバイを崩せるのか?~

いかにも森村誠一らしい本格ミステリー。
よくいえば“生真面目”で、悪く言えば“生硬”と表現すればいいのだろうか。
犯罪を犯す側も捜査する側も全く“遊び”がなく、それぞれの役目を懸命に果たそうとしている。
時代性かもしれないけど、そんな思いを抱いてしまう。

本作のテーマは紹介文のとおり、アリバイ崩しに収斂されていく。
当然、舞台はアルプス山脈となるのだが、トリックの殆どが「写真」或いは当時の「写真機」(古い表現だ)によるものなのがツラい。
刑事たちが図解入りで説明してくれるけど、もともとこういう方面に疎い私が、しかも数十年前の内容で説明されるもんだから、ほぼ理解不能。
列車に関するアリバイ作りも一応登場はするのだが、あくまで添え物程度で、こりゃぁーカメラマニア以外にはどうにもピンとこなかったのではないか。
本格ミステリーとしてのプロットはほぼこれ一本勝負なのは、他の良作と比較すると弱さを感じる。

あとは美紀子だな・・・
これも、いかにも森村作品に登場しそうなヒロインとして描かれている。
誰もが振り返る美しさ、そして清廉な心を持つ女性・・・なんだけど、自分が美しく男を惑わしていることも十分に認識している・・・
そんな彼女を不幸のどん底に陥れる終章。そして思いもかけぬラストシーン!
もしかしたら、これが本作で一番のサプライズかも?

No.2 7点 文生
(2017/11/10 09:00登録)
写真を利用した古典的なアリバイ崩しものですが、山岳を舞台にした愛憎サスペンスとアリバイ崩しのプロセスがうまく絡まり合って、存外楽しく読むことができました。

No.1 5点 nukkam
(2016/03/17 09:10登録)
(ネタバレなしです) 1972年発表の本格派推理小説です。事件関係者はわずか5人(被害者も含まれます)、犯人はこの人以外にありえないだろうと早々と絞り込まれ、鉄壁のアリバイ崩しに刑事たちが挑む展開です。企業利益を巡る争いの中での身勝手で打算的で多くの読者の反感を買いそうな人物描写はこの作者ならではです。一方で山岳描写の美しさもなかなかの筆力です。アリバイトリックは非常によく考えられていると思いますが、専門技術に頼っているのが少々問題だし、その技術が現代でも通用するのかはかなり疑問です。それ以上に気になったのがこのタイトルなのに殺人は日本アルプスで起きていないこと(容疑者が犯行時間帯に日本アルプスにいたというアリバイを主張する)。これは看板に偽りありの印象を与えるのでは。

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