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ミステリの祭典

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愚者たちの棺
パーブライト警部シリーズ

作家 コリン・ワトスン
出版日2016年03月
平均点5.33点
書評数3人

No.3 5点 人並由真
(2016/06/14 14:19登録)
(ネタバレなし)
 イギリスの地方で起こる変死、それが連続殺人の疑いに繋がる。さらには何やら町のなかで複数の人物が関わる秘密の匂いが…というそこに何が起きてるのかというホワットダニットの興味まで喚起してなかなか面白そうな(はずの)趣向を用意。

 ただそれが英国流のドライユーモアの中で語られ、ケレン味を相殺させている印象も強い。オカルト好きの家政婦ミセス・プールが物語の後半になって「××を見た」と言い出すあたりなんか、最後まで読むとなかなか楽しい伏線になっているんだけど、ほかの登場人物のリアクションも薄いから盛り上がらないわ。まぁこれは、羊飼いの狼少年的な演出の中に伏線を隠そうとする狙いだったとも、推し量りますが。

 最後の真犯人の意外性はなかなか良かったが、一方でその手前で判明する町の連中による秘密の方が存外に大したことなかったのはちょっと残念。こちらはポーターの『切断』とかケンリックの『殺人はリビエラで』みたいな<何かしらのもの>を予期していたので。まぁ1950年代、大戦後の経済的復興も進み、世の中に余裕が出来てきた本書の刊行時期には、比較的リアリティ(というかアクチュアリティ)のあったネタだったとは思うんだけれど。

No.2 6点 kanamori
(2016/04/12 21:54登録)
キャロブリート氏の葬儀は、町の名士にしては少ない参列者だけで寂しく執り行われた。その数か月後、今度は隣に住む新聞社の社主マーカス・グウィルが、送電用鉄塔の下で感電死体で発見される。地元警察のパーブライト警部は、殺人事件と判断し関係者である町の名士たちの聴取に乗り出すが--------。

イギリス東部にある架空の港町フラックスボローを舞台にするパーブライト警部シリーズの第1作。
コリン・ワトスンの作家としての活動期間(1958年~82年)がほぼ重なっているためか、内容紹介や解説ではD.M.ディヴァインの名前がよく引き合いに出てきますが、作風は全く異なり、本書を読む限りでは本格ミステリというより、軽いユーモアが入った警察小説というほうが個人的にしっくりきます。一癖も二癖もある個性的な登場人物たちの会話に含蓄があり、控えめながらシニカルでブラックなユーモアが漂うところは、いかにも英国ミステリらしい味わい。なかでも、ラストのチャブ警察署長の奥方のひと言に”らしさ”が凝縮されていますねw
厳格な意味では”本格”と言いずらいとはいえ、謎解きミステリとしての伏線の妙味と、真相の意外性はそれなりに兼ね備えており、解説の森英俊氏の「読み進めるほどに癖になる」という言葉を信じ、次の邦訳を期待することにしましょう。

No.1 5点 nukkam
(2016/03/14 03:20登録)
(ネタバレなしです) わずか12作の長編といくつかの短編を残した英国のコリン・ワトスン(1920-1983)のデビュー作が1958年発表のパーブライド警部シリーズ第1作の本書です(長編は全部パーブライト警部シリーズです)。パーブライトが容疑者と知り合いだったり、第14章での「以前に起きたささやかな出来事」についての言及などは自分で謎解きを試みようとする読者からすると探偵役が(読者より)有利な立場にあったのではと本格派推理小説としてのフェアプレーに疑問符が付きかねません。ひねりを入れすぎて謎解きがわかりにくいのも少々問題で、チャブ警察署長が最後の質問で指摘していた「つまらん作り話」(パーブライトは「虚しい努力」と評価)などは無用の混乱を招いただけのように感じます。ユーモアもわかりにくく、例えば締め括りのチャブ夫人の発言が署長の「風紀上の問題」を暗にほのめかしていたのに私は最初は気づきませんでした。

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