home

ミステリの祭典

login
悪魔のいる天国

作家 星新一
出版日1961年01月
平均点6.00点
書評数3人

No.3 6点
(2025/03/27 19:21登録)
ブラックSFオンパレードのショートショート集。
いつものように笑えないなあ、と思いながら読んでいたら途中で、ダークなブラックジョークばかりだと気づいた。でももちろん気分が暗くなることはないし、けっこう楽しめた。

質的にはみな平均以上だが、突出した出来ばえものはない。
だからボッコちゃんの中の優秀作品のように、記憶に刻まれるような作品はないが(たんにいまの私の記憶力がめちゃ落ちているだけかも)、何作か挙げるとすれば、「肩の上の秘書」「ゆきとどいた生活」「薄暗い星で」ぐらいだろうか。

解説は青木雨彦が書いている。
本ショートショート集についての解説がほとんどない。その代わりに、星新一が若い頃、太宰治の諸作品を読みふけっていたこと、そして太宰とは逆の方向に向かいたかったことなどのエピソードが書いてあり、興味深く読めた。
星作品は決して健康的ではない、というのも的を射ている。

No.2 6点 糸色女少
(2023/09/13 22:14登録)
ショートショート集だが、タイトルと同名の作品はない。天国のごとき状況にも、ある瞬間に悪夢が入り込むことがある。それは時に異星人であり、時に狂人であり、よく知った身近な人であり、政府の残酷な政策であり、仕込まれた作戦であり、ふとしたアクシデントである。
シニカルな展開には、しばしばニヤリとさせられる。しかし、作品に含まれる毒は、決して世の人を害することなく、むしろ読む者に自省をうながすはずだ。
大人のための小洒落た寓話集でありながら、SF入門書として小中学生にも勧められる。そんな星新一の稀有な作風と改めて向き合うことが出来る一冊である。

No.1 6点 虫暮部
(2017/06/01 13:51登録)
 ショート・ショート作家は半ば必然的に作品数が多くなるわけで、その全部が名作とはやはり行かない。一編ずつ単独で読めばそれぞれ面白くてもこうしてまとまると玉石混交に見えるのは星新一に限った話ではない。
 私の場合、本書では「ゆきとどいた生活」がベスト。或る種の叙述トリック?
 一方で、誰かの掌の上で完結するタイプの話(おかしな何かがあるが、それは某がとある目的で作ったニセモノであった、とか)は物足りない。ネタは良くても結末が説明的だと気分が殺がれて勿体無い。あと、最後のセンテンスが三点リーダーで曖昧に終わるものもあまり好きでは……。

3レコード表示中です 書評