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ミステリの祭典

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北アルプス殺人組曲

作家 長井彬
出版日1983年10月
平均点6.67点
書評数3人

No.3 7点 人並由真
(2020/09/08 13:02登録)
(ネタバレなし)
 躍進中の若手画家でアマチュア登山家の植垣達雄が、北アルプスで死亡する。植垣の友人でピアニスト、そして登山の心得がある竜泉寺純は死体が発見された山地の近隣にいたが、その植垣の死の状況にはいくつかの不審点があった。独自の調査を進める竜泉寺は、植垣の家族、そして植垣が登山時に同行していたという女性教師・藤原美佐に接触するが。

 長井作品は大昔に読んだ『原子炉の蟹』以来だが、本サイトでのnukkamさんの諸作へのレビューが良い感じなので、興味が湧いて手にとってみる。(今回の本作は先日出向いた先の古書店で、帯付きだがあまり状態のよくないカッパ・ノベルス(本作の元版)を50円で買った。)

 ストーリーに必要な情報だけをポンポンと並べてくれる感じの文章(文体)はややそっけないが、それだけに非常に読みやすい。
 主な舞台の一角となる北アルプス南岳についても、ちゃんと現地の山岳図が掲載されているし、特に地形のややこしさが読む側の負担になることもない。実は読む前はそのへんがちょっと面倒臭そうかなと危ぶんでいたが、幸いに杞憂に終わった。

 冒頭の怪死? の謎、中盤の変死の謎、そして後半の密室殺人の謎、どれも小粒感が漂うのはナンだが、さらにこれらにアリバイの謎? をからめて、かなり意外な真相が待っていた。いや、nukkamさんやパメルさんのおっしゃるように犯人そのものは大方の察しが付くのだけれど、こういう大技を仕込んでいたか、という驚きではある。
 それともうひとつ、(中略)トリックはかなり豪快で、第三者に犯行進行中に何らかの形で露見してしまう危険性を考えたら、かなりコストパフォーマンスの悪い行為だったとは思う。まあフィクションでエンターテインメントだから良いのだが。
 評点は0.5点オマケ。

No.2 6点 パメル
(2017/04/03 13:22登録)
世間一般にあまり知られていない(勝手な想像です)この作品はタイトルでかなり損していると思う
巷に溢れているお手軽なトラベルミステリではありません
作者の趣味を活かした山岳ミステリで神々しく美しい北アルプスを舞台に禍々しい殺人の意図が隠された推理とロマンが一体化した本格ミステリであり登山が好きな方はより楽しめると思います
ただある人物の行動が怪しすぎて犯人が予測出来てしまった点は残念

No.1 7点 nukkam
(2016/01/06 19:33登録)
(ネタバレなしです) 社会派推理小説と本格派推理小説のジャンルミックス型の作品を3作書き上げた長井は1983年発表の本書(長編第4作)でより本格派寄りに舵を切りました(本格派好きの私としては大歓迎です)。登場人物が少なく犯人の意外性で勝負しているミステリーではありませんが、それはさほど問題ではありません。第5章で羅列された9つの謎、アリバイ崩しに密室と充実の謎解きが楽しめます。アマチュア探偵(容疑者でもあります)の使い方も上手く、適度なタイミングで捜査が暗礁に乗り上げたり何者かに襲撃されたりとプロットに起伏があります。トリックも豊富で、ガス中毒未遂事件のようにそんな単純な方法でできるのか疑わしいのもありますけど、意外と手の込んだトリックが使われています。一番釈然としなかったのはあんな簡単に(トリック的に)結婚が成立してしまうこと。本当に可能だったらある意味恐い(笑)。

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