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ミステリの祭典

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作家 東山彰良
出版日2015年05月
平均点6.00点
書評数3人

No.3 6点 zuso
(2022/12/22 22:56登録)
いわば自分探しが描かれるが、一九七五年の台湾を起点としたところに妙味がある。蒋介石が死去した年だ。蒋介石の死後、何者かに惨殺された祖父の死を軸に物語は展開するのだが、その謎には日本の植民地だった時代に由来する大陸との対立が潜んでいる。
台湾の歴史という重く大きなテーマを、一青年の冒険活劇的な成長譚に託し、世相や風俗もふんだんに織り込んで、エンターテインメントに仕立てた力量には、こんな混沌をよくも一編にまとめ上げたものだと感服するばかりだ。

No.2 4点 yoshi
(2017/08/14 06:37登録)
いきなり野糞のシーンからはじまり、女幽霊の話とか、ゴキブリ大量発生の話とか、エピソードがばらばらで一貫性がない。まあ最終的には祖父殺しの謎を解く話になって行くんだけど、ミステリーとしての評価はあまりできない。20年に一度の傑作は褒めすぎ。

No.1 8点
(2015/12/03 09:33登録)
1970,80年代の台湾を舞台にした、郷愁型青春ミステリー。
第一章で主人公の秋生の祖父が殺される。その後に、殺人捜査ではなく主人公の青春物語が描かれていく。この青春物語が殺人事件にどう関係するのか。

読み始めてすぐに小説世界へ誘われました。
秋生と、その家族や悪友の小戦、姉貴分の毛毛、軍隊仲間など周囲の人物たちとのやりとりや行動は真剣でもあり、滅茶苦茶でもあり、味わいのある文章も手伝って、読んでいて可笑しさがこみ上げてきます。終始、語り口や会話による活き活きとした感が醸し出されてもいます。
その時代に流行った、老鷲合唱団(イーグルス)の『デスペラード』が小説の中のBGMとして流れているような、ノスタルジックな気分にもなります。
読み始めでは青春小説や回想型ミステリーが思い浮かんでくる一方、中途では香港のヤクザ映画を連想したりもしましたが、結局どれともちがっていて、知らぬ間に郷愁を誘う独特の雰囲気に浸りながら青春物語に酔いしれていました。

直木賞の選考では満場一致とのこと。賞での満票というのは当てになりませんが今回は当たりです。乗れなかったという人が身近にいましたし、他のサイトでもまちまちの評価でしたから、好き嫌いの分かれる作品なのかもしれません。

ミステリーとしての真相、背景はこの時代背景からすればありがちで(ありがちと言っても劇的だな)、この小説にはしっくり合っているように思います。ルーツ・ミステリーとでも名づければいいかな。
祭典基準として通例では、ミステリー性と物語性を中心に文章、キャラクタを加味し、さらに個人的嗜好を考慮していますが、ときに嗜好が各要素を凌駕することがあります。本作はそれかも。

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