home

ミステリの祭典

login
チェスプレイヤーの密室
外典コレクション(実作ジャック・ヴァンス)

作家 エラリイ・クイーン
出版日2015年09月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点
(2023/08/31 21:25登録)
原書房から出版された外典コレクション3冊の実作者中では、ずば抜けて有名なジャック・ヴァンスによる作品です。と言っても、ヴァンスのSFは読んだことがないのですが。
訳者である飯城勇三の解説によれば、ヴァンスによる前作 “The Four Johns” の生原稿と出版されたものを比べると、「ほぼすべての文章に手が加えられていた」(たぶんリーにより)そうですが、本作を読んでみると、冒頭からリーだったらこんな書き方は絶対しないだろうと思える文章構成です。nukkamさんが「どこか冷めた雰囲気」と書かれているのもそういうことでしょう。
密室トリックはかなり早い段階からこのようなタイプではないかと想像してはいたのですが、大胆でありながらかなり現実的な方法です。しかしトリックが分れば犯人も自動的にわかるタイプではあります。
それにしても本来クイーンって不可能犯罪はあまり得意ではない作家だと思うんですけど。

No.1 6点 nukkam
(2015/11/10 14:18登録)
(ネタバレなしです) 1960年代から1970年代前半にかけて他の作家がエラリー・クイーン名義で書いたミステリーは30作近くもあり、真正のクイーンであるフレデリック・ダネイとマンフレッド・リーの承認を得ていることから偽作というレッテルこそ貼られてはいませんが、ハードボイルドや犯罪小説といった従来のクイーンのイメージと合わない作品があることもあってクイーンの熱心なファンでもそこまで手を伸ばそうという読者はまだ多くないようです。クイーン名義で3作品を書いたSF作家のジャック・ヴァンス(1916-2013)が1965年に発表した本書は、それらの中では最も真正のクイーン作品に近いと高い評価を得ている本格派推理小説です。ハードボイルドほどではないにしろ、どこか冷めた雰囲気があって謎解きも微妙に盛り上がりませんが最後はサスペンスが増加して、密室トリックがなかなか印象的でした。ヒロイン役のアンは他人と(家族とも)距離を置くような描写が多く、読者が共感を抱きにくいキャラクターではないでしょうか。だから最後の方で「かわいそうなお父さん」としんみりしているのを見ても「へえ、そういう感情もあったの」とこちらもドライな感覚で受け止めました。

2レコード表示中です 書評