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ミステリの祭典

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チェスプレイヤーの密室
外典コレクション(実作ジャック・ヴァンス)

作家 エラリイ・クイーン
出版日2015年09月
平均点5.33点
書評数3人

No.3 4点 E-BANKER
(2024/10/06 14:15登録)
「E.クイーン外典コレクション」と銘打って刊行された作品。
J.ヴァンス(個人的にはよく知らない作者だが)が代作者となる。原題は“A Room to Die in”
1965年の発表。

~父親の「自殺」で少なくない遺産を手にすることになったアン・ネルソン。現場は完全な密室状態であったという。しかし、あの父親が自殺するなんて考えられない。殺人であることを証明するためには、かの密室を破らなくてはならないのだが・・・~

作者名こそE.クイーンとなっているけれど、やっぱり「似て非なるもの」という読後感。
邦題では華々しく「密室」と打ち出されており、その名のとおり密室トリックも登場する。それらしい「挿入図」も出てくるし、材料は揃っているわけだけど・・・
うーん。でも本当に「一応」だよね。解説者はえらく誉めてはいるけれど、どうみても「パッとしない」し、「しっくりくる」ものではなかった。
(そもそもwhyが相当弱いし)

「犯人当て」の趣向としても、いいとこ二級品。
登場人物も少ないし、「いかにも分かりやすい」人物は真犯人でないはずなのが、割とそれに近い人物が結局真犯人だったりする。(ネタバレっぽいけど)

いいところは何かなあー? うーん。なんかある?
探偵役となるヒロインの造形くらいか。
やはり、クイーンの名は偉大で、所詮は代作者であったということなのか。
でも、外典シリーズではこれが一番との評もあるようなので、だとすると他の作品は手を出しにくい。
うん。ちょっと雑な書評だけれど、やむを得ない。

No.2 6点
(2023/08/31 21:25登録)
原書房から出版された外典コレクション3冊の実作者中では、ずば抜けて有名なジャック・ヴァンスによる作品です。と言っても、ヴァンスのSFは読んだことがないのですが。
訳者である飯城勇三の解説によれば、ヴァンスによる前作 “The Four Johns” の生原稿と出版されたものを比べると、「ほぼすべての文章に手が加えられていた」(たぶんリーにより)そうですが、本作を読んでみると、冒頭からリーだったらこんな書き方は絶対しないだろうと思える文章構成です。nukkamさんが「どこか冷めた雰囲気」と書かれているのもそういうことでしょう。
密室トリックはかなり早い段階からこのようなタイプではないかと想像してはいたのですが、大胆でありながらかなり現実的な方法です。しかしトリックが分れば犯人も自動的にわかるタイプではあります。
それにしても本来クイーンって不可能犯罪はあまり得意ではない作家だと思うんですけど。

No.1 6点 nukkam
(2015/11/10 14:18登録)
(ネタバレなしです) 1960年代から1970年代前半にかけて他の作家がエラリー・クイーン名義で書いたミステリーは30作近くもあり、真正のクイーンであるフレデリック・ダネイとマンフレッド・リーの承認を得ていることから偽作というレッテルこそ貼られてはいませんが、ハードボイルドや犯罪小説といった従来のクイーンのイメージと合わない作品があることもあってクイーンの熱心なファンでもそこまで手を伸ばそうという読者はまだ多くないようです。クイーン名義で3作品を書いたSF作家のジャック・ヴァンス(1916-2013)が1965年に発表した本書は、それらの中では最も真正のクイーン作品に近いと高い評価を得ている本格派推理小説です。ハードボイルドほどではないにしろ、どこか冷めた雰囲気があって謎解きも微妙に盛り上がりませんが最後はサスペンスが増加して、密室トリックがなかなか印象的でした。ヒロイン役のアンは他人と(家族とも)距離を置くような描写が多く、読者が共感を抱きにくいキャラクターではないでしょうか。だから最後の方で「かわいそうなお父さん」としんみりしているのを見ても「へえ、そういう感情もあったの」とこちらもドライな感覚で受け止めました。

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