皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
しゃんさん |
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平均点: 6.75点 | 書評数: 88件 |
No.6 | 6点 | きみにしか聞こえない- 乙一 | 2002/11/27 21:25 |
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それぞれの短編は独立している。共通しているのは、引きこもりがちな主人公に不可思議な事件が起こるという点。 孤独と孤独を辛いと感じる気持ちが素直な文章で書いている。だからその苦しさが不思議な事件で癒されていく過程が素直に呑み込めるような気がした。そして、ラストは切ない。そして、CALLING YOUでは悲しみが、「傷」では希望と優しさが、その切ない気分をより強めてくれたように思う。 ただ、「華歌」は余り私の好みには合わなかった。主人公に関して、ある仕掛けがしているようだが、私はその仕掛けで楽しむことは出来なかった。 |
No.5 | 6点 | 天帝妖狐- 乙一 | 2002/11/25 16:02 |
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「A MASKED BALL」は余り面白く感じられなかった。 どうにも主人公に感情移入できない。 「天帝妖狐」は私の好みにあった。文章は素直で淡々としている。派手さはないが、登場人物の苦しみや悲しみや恐怖が想像できる気がした。後味はけしてよくないが、それもこの作品の魅力だとおもう。 |
No.4 | 9点 | 暗いところで待ち合わせ- 乙一 | 2002/10/26 19:00 |
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目の見えない女と警察から逃げている男の話。二人のそれぞれの視点から物語は語られる。 二人の登場人物は二人と、人と溶け込もうとしない性質で孤独である。実にじめじめとしていて掬いようが無いように思える。男が女の家に住み着いてからもそのじめじめ感は続く。しかし、お互いが地温も区の中でありながらも互いの事を認識し、生活していく様子はじめじめしているにもかかわらず、温かい。似たもの同士の馴れ合い、傷のなめあいといってしまえばそれまでなのだけれど、私はこの場面が好きだ。 ミチルとカズエとの和解の場面では不覚にも涙ぐんでしまった。一番最後は少し物足りない感じがした。あの台詞には余り感動しなかった。 |
No.3 | 9点 | 死にぞこないの青- 乙一 | 2002/10/15 20:40 |
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怖い描写なんて何一つないのに、恐ろしくて胸が痛くてたまらない。 ラストは不思議な終わり方。 |
No.2 | 9点 | 夏と花火と私の死体- 乙一 | 2002/10/03 22:32 |
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表題作では、淡々と、さわやかな子供らしい語り口で語られているのにもかかわらず、語り手たる私は死体(?)であり、語られている内容は私の死体の処理についてである。不気味であるはずなのに語り口は何処までも日常的。最後の1ページに体が震えた。 「優子」語り口は此方のほうが読みやすいが、私は「夏と花火と〜」のほうが好みである。本格ミステリ的な仕掛けは、最後の台詞「少し寂しかった」をものすごく生かしているように感じる。胸が痛んだ。 |
No.1 | 9点 | GOTH リストカット事件- 乙一 | 2002/10/01 15:53 |
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生まれながらの殺人鬼の話。 感情の欠落した少年と、感情表現を失った少女の組み合わせもいい。少女の存在によって少年の感情のなさが浮き彫りにされる。 淡々とした文章は作中全体に貫かれている。たとえ手首を切る場面であっても、人が生き埋めにされる場面であっても何処までも淡々としている。しかし、淡々と、さわやかともいえる文章で書かれたそれは実際にはとても残酷で、狂気を内包している。文章と内容との落差が、不可思議な味を出している。 ミステリ的なトリックも残酷さを柔らかく包んでいて、いろんな意味で痛い作品。 痛いが、凄い… |