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ギザじゅうさん
平均点: 6.99点 書評数: 238件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.14 6点 保瀬警部最大の冒険- 芦辺拓 2005/03/12 19:43
良くも悪くも、探偵小説、SF、etcetcの大パロディ小説。
この薀蓄(その大半は理解できないが)盛りだくさんのぶっとびぶりは読んでて楽しい。が、文章が読みづらく、場面展開も急で、話がよめなくなることもしばしば。そこが辛いが、二度三度と読めば、そのぶん楽しめるかもしれない。

No.13 10点 紅楼夢の殺人- 芦辺拓 2004/10/17 14:01
『紅楼夢の殺人』 (文藝春秋)

今年度ナンバー1の大傑作!
相変わらず芦辺らしく殺人トリックのオンパレード。しかし、それらのハウダニットとしては弱く、その点ではいまいちかもしれない。そして第一の真相看破も容易に想像がつきそうで物足りない。しかし、その後に現われる真相があまりに凄い。これを予想できる読者はいないのではないだろうか。本格でありながら、きわめてアンチ的!

本作では『紅楼夢』を舞台にしていることに必然性もあって、それこそがトリックのようでもある。さらに「本格」としての形式をとる自体がトリックに近く、「本格推理」の地盤を揺るがすほどの凄さは読んでみないとわからない。

その他の点でも、優れた点は目立つ。登場人物も非常に多く、中国らしく名前が独特で読みづらいのに、それらがすっと頭に入ってきて、混乱する事も無い。文章の一つ一つも、非常に考えたのだろうと思われるような文章でもある。「大観園」という舞台も美しく、ラストもまさに幻想的である。この一発アイデアを活かしきり、その他の点でも文句も無い。中国文学ミステリの金字塔、『妖異金瓶梅』も必読の大傑作であるが、本作もそれに劣らない大傑作である。客観的に見ても、この点数をつけるのは、決してできすぎた事だとは思わない。

No.12 7点 赤死病の館の殺人- 芦辺拓 2004/09/12 16:23
表題作はポーを元にしながらも、現代に赤死病を復活させた手腕には驚き入る。この様に色彩的(映像的)に印象の強い話は大好きである。トリックには多少疑問が残るが、中編というサイズに上手くまとまっている。
「疾走するジョーカー」は、スマートで切れのいいトリックに、現代の青少年の犯罪をからめたパピッとまとまった好短編。ついにこの様な犯人像を描いたか、芦辺さん。
「深津警部の不吉な赴任」は意外な犯人。この様なトリックはあまり好きでないし、よい効果を挙げているかも疑問。
「密室の鬼」は「困難は分割せよ」のよい見本のような作品。あまり好きな話でもなかったが、ラストのくだりは密室ミステリの現状を捉えているようで面白い。
非常に良質の短編集。「探偵宣言」の様な、ごちゃごちゃした感じもなく、ストーリーテリングも上手くなったと思う。

No.11 7点 和時計の館の殺人- 芦辺拓 2004/08/10 01:36
犬神家へのオマージュ作品。ラストの謎解きなんて金田一を意識しすぎ。
和時計の薀蓄は読んでて非常に楽しめたし、非常に念の入ったトリックもなかなか。ただし、和時計の(というか昔の暦の)素養が無いためか、トリックを聞かされても、理解しがたいものがあった。それだけでなく、事件の構図自体が何とも複雑なため、よけいに混乱してしまう。だから、このトリックを元にシンプルに仕上げた方が良かったのかもしれない。
あとは、遺産をめぐる争いはもっとドロドロしたほうが楽しめたし、包帯男ももう少し効果的に使えたのではないかとも思える。

No.10 8点 怪人対名探偵- 芦辺拓 2004/07/11 21:17
古き良き探偵小説であり、乱歩の通俗長編に本格をプラスした作品。これを楽しめるのは人によりけりなのかもしれないが、探偵と怪人の対決と聞いただけでワクワクしてしまう者にとっては、嬉しい限りである。
犯人の正体が普通にわかってしまう辺りは物足りないが、プロットに光る点の多い。芦辺ワールドの登場人物も多く登場しているので、ファンは大満足。時計台の処刑などとても面白いのだが、もっと視覚的な印象(特に色彩的に)が強ければなお良かった。

No.9 7点 不思議の国のアリバイ- 芦辺拓 2004/06/06 14:55
本書で森江春策の助手(ワトスン役)として、新島ともかが初登場する。読者としては嬉しい限りである。
氏の作品の中では、『歴史街道殺人事件』に続くアリバイ物。トリックも良い意味で、歴史〜とは対照的でなかなかひねりが効いている。
怪獣映画やら探偵映画やらの薀蓄もさることながら、読感も気持ちよく、素直に楽しめた。

No.8 9点 十三番目の陪審員- 芦辺拓 2004/06/06 14:49
あまり本格本格してないため、普通の人にも薦めやすい作品。
本作のプロットも非常に錯綜しており、「冤罪計画」や陪審員制度と非常に凝っている。後半からの法廷シーンも非常に圧巻であり、トリックも面白い。最後の最後で陪審員制度と冤罪をめぐる陰謀の恐ろしさもさながら、それに対する森江春策の解決のスマートさも、一読忘れがたい。竜頭蛇尾ということも無く、一気に読めてしまう。
本書は近未来を舞台にしているようであるが、今後50年後か100年後に本作がどうなっているか、非常に重要な作品でもある。率直に言えば、日本に陪審員制度が導入される可能性は低いというのが、今の日本の現状であると思う。だからこそ、このような作品は書かれるべきである。
社会派推理に限らず、評論でも何でも、今の世界に欺瞞を感じ、それを表現することが重要なのである。それがわからずに、本書に現実性という点から酷評するのは非常に悲しいことである。

No.7 6点 死体の冷めないうちに- 芦辺拓 2004/06/06 14:29
テレビの二時間サスペンスにわりと近い作品。
とはいえ、しっかりとした本格(コテコテの本格ではないけど)
自治警を登場させた一風変わった作品尽くしではあるが、理化学的なトリックが多いせいか、多少物足りなくも思える。
氏の作品の底流に常に流れている「市民」という点では、『新宿鮫』とは別物だと思って評価しているし、探偵の好みが氏と近いせいか、登場人物に大いに好感が持てた。

No.6 8点 地底獣国の殺人- 芦辺拓 2004/05/03 22:54
秘境冒険SF、国際スパイ、古代史、そして本格ミステリという、並外れたトンデモ本。
ここまでやると一つ一つが中途半端に感じなくもないが、トリックがこの舞台としっかり結びついてるのは上手く、祖父の春之助が遭遇した事件を森江春策が解くという展開にも意味があり、本格度が多少弱いのも気にならず、とても楽しめた。
それにしても、こんな作品を森江春策シリーズとして書いてしまうからにして、とんでもない。
読む前は取っつきにくそうだが、おすすめの一作。

No.5 6点 探偵宣言- 芦辺拓 2004/05/03 22:43
芦辺拓の特徴である、いき過ぎた技巧が長編だけでなく短編にまで出ている。あまりに技巧的なまでに解決を読み返さないと理解しづらく、短編としてはあまり上手いとは言い難い出来だった。
「殺人喜劇の迷い家伝説」で家屋消失に挑んだのは嬉しいが、泡阪妻夫の「砂蛾家の消失」や二階堂黎人「ロシア館の謎」(どちらも傑作)のような一発トリックでないのは残念。
「殺人喜劇のXY」はダイイングメッセージに何通りもの解決をつけるのはいいが、中国語を利用した物ばかりで面白みには欠ける。
最後の「殺人喜劇の森江春策」も連作の仕掛け的な作品で、出来はあまりよくない。その仕掛けも個人的には好きだけど、あまりいい働きをしているようには思えない。
こんな作品を書いてしまうところが、芦辺拓の良いところであり、悪いところでもある。

No.4 5点 殺人喜劇のモダンシティ- 芦辺拓 2004/04/29 00:21
芦辺拓=過多本格。
そのイメージ通りの作品であり、さらには探偵小説やら映画やらの博覧強記。
そういった雰囲気を楽しませるのが、作者の主眼なのだろうが、本格としては『殺人喜劇の13人』よりもそこが浅くいまいち。
過多、故に焦点がぼやけるというのが強く感じられた。

No.3 8点 時の誘拐- 芦辺拓 2004/04/11 11:36
フーダニット、ホワイダニットにハウダニットでは密室、アリバイ、誘拐と殺13のような本格の嵐。おまけに過去の事件ではあの警部(十津川警部じゃないで)まで登場して、他にも本格のツボを突くシーンが満載。一つ一つのトリックも面白く、誘拐の手際もかなり見事。
この本核の過多状態が良くも悪くも芦辺の持ち味。
さらに、今までの作品には見られないストーリーテリングの巧みさも加わり、読者はもうただ唸るばかり。
過去と現在を結ぶ線がもう少し欲しい気もしたが、最後に森江春策が放つ台詞は、最も印象深いものの一つだった。

No.2 7点 歴史街道殺人事件- 芦辺拓 2003/10/26 11:47
一見トラベルミステリー(実際トラベルミステリーだけど)
しかし、大胆にして悪魔的なトリックのあるまさに本格!
バラバラ事件と他の事件が混ざってよく分からなくなってしまいがちなので、じっくり読む必要があるかも。

探偵としての個性も少なくエゴ丸出しでないのは、それはそれで気にならないし、そこが森江春策だと思った。

No.1 7点 殺人喜劇の13人- 芦辺拓 2003/01/06 14:59
稚気に満ちた作品でなかなか面白い。
それにしても警察はいったい何をやっていたのか・・・。

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ギザじゅうさん
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