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ギザじゅうさん
平均点: 6.99点 書評数: 238件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.178 8点 怪人対名探偵- 芦辺拓 2004/07/11 21:17
古き良き探偵小説であり、乱歩の通俗長編に本格をプラスした作品。これを楽しめるのは人によりけりなのかもしれないが、探偵と怪人の対決と聞いただけでワクワクしてしまう者にとっては、嬉しい限りである。
犯人の正体が普通にわかってしまう辺りは物足りないが、プロットに光る点の多い。芦辺ワールドの登場人物も多く登場しているので、ファンは大満足。時計台の処刑などとても面白いのだが、もっと視覚的な印象(特に色彩的に)が強ければなお良かった。

No.177 5点 あいにくの雨で- 麻耶雄嵩 2004/07/11 21:09
麻耶の試行錯誤の中から生まれた作品だろうか?多少物足りない気もするし、何故この作品を書いたのかもよくわからない。
麻耶らしい大伽藍のような点もなく、それを支える堅実なロジックも弱い。プロットに関しても殺人件と生徒会の事件に、もっと密接な関係があれば良かったのだが・・・。
普通に楽しめるといえば楽しめるが・・・。

No.176 6点 殺人鬼- 綾辻行人 2004/07/04 12:10
読んでいても描写が矛盾だらけなので、大体トリックはわかってしまった。そのトリックもやや力押しな気もするが、スプラッタホラーもわりと好きなのでさほど不満も無い。が、やはり本格偏愛主義としては、本作は迷路館や霧越邸に比べ物足りない。

No.175 6点 絶叫城殺人事件- 有栖川有栖 2004/06/27 16:37
今までの火村・アリス物の短編集では最もおもしろい。
しかし、今までのように本格としての濃度は薄い。それが難点なのだが、本作では本格パズラーを前面に押し出さずに、小説としての味を重視しているため、好感の持てる出来ではある。一つのトリックから小説を紡ぎだす氏の手腕を評価したい。
でも、個人的な嗜好とはかけ離れる作品である。表題作の消失トリック、紅雨荘のアリバイ、雪華楼の足跡密室など、容易にわかってしまうものばかり。表題作の異様な動機にしても、以前に学校の小論で書いたものと全く同じというのも、複雑な気分である。

No.174 9点 キッド・ピストルズの冒瀆- 山口雅也 2004/06/13 13:54
マザーグース・ミステリというだけで、本格心がくすぐられてしまう。それほど魅力的なテーマなのに、作例があまり多くないのはクリスティ等々の先人達への遠慮だろうか?
それはさておき、これが傑作であることは間違いない。
まさにパラレル英国を舞台にした論理と逆説のワンダーランド!中でも「曲がった犯罪」の論理性には瞠目した。
この異様な舞台だけでなく、山口雅也の個性がしっかりと出せている。

No.173 7点 ifの迷宮- 柄刀一 2004/06/13 13:46
近未来舞台のSFミステリ。
医療問題に関する社会派的な捉え方も出来るが、密室やら動き回る使者やらがちがちの本格になってるのが柄刀らしい?
トリックは最近読んだ探偵小説(これも舞台は近未来)に非常に似通っていたが、使い方が全く違い、どちらも素晴らしい出来である。
難解な点も多多あるので、薦めづらい作品かも

No.172 7点 不思議の国のアリバイ- 芦辺拓 2004/06/06 14:55
本書で森江春策の助手(ワトスン役)として、新島ともかが初登場する。読者としては嬉しい限りである。
氏の作品の中では、『歴史街道殺人事件』に続くアリバイ物。トリックも良い意味で、歴史〜とは対照的でなかなかひねりが効いている。
怪獣映画やら探偵映画やらの薀蓄もさることながら、読感も気持ちよく、素直に楽しめた。

No.171 9点 十三番目の陪審員- 芦辺拓 2004/06/06 14:49
あまり本格本格してないため、普通の人にも薦めやすい作品。
本作のプロットも非常に錯綜しており、「冤罪計画」や陪審員制度と非常に凝っている。後半からの法廷シーンも非常に圧巻であり、トリックも面白い。最後の最後で陪審員制度と冤罪をめぐる陰謀の恐ろしさもさながら、それに対する森江春策の解決のスマートさも、一読忘れがたい。竜頭蛇尾ということも無く、一気に読めてしまう。
本書は近未来を舞台にしているようであるが、今後50年後か100年後に本作がどうなっているか、非常に重要な作品でもある。率直に言えば、日本に陪審員制度が導入される可能性は低いというのが、今の日本の現状であると思う。だからこそ、このような作品は書かれるべきである。
社会派推理に限らず、評論でも何でも、今の世界に欺瞞を感じ、それを表現することが重要なのである。それがわからずに、本書に現実性という点から酷評するのは非常に悲しいことである。

No.170 6点 死体の冷めないうちに- 芦辺拓 2004/06/06 14:29
テレビの二時間サスペンスにわりと近い作品。
とはいえ、しっかりとした本格(コテコテの本格ではないけど)
自治警を登場させた一風変わった作品尽くしではあるが、理化学的なトリックが多いせいか、多少物足りなくも思える。
氏の作品の底流に常に流れている「市民」という点では、『新宿鮫』とは別物だと思って評価しているし、探偵の好みが氏と近いせいか、登場人物に大いに好感が持てた。

No.169 6点 - 麻耶雄嵩 2004/05/30 11:55
麻耶にしては、かなりシンプルな展開に驚き。
ただし『夏と冬の奏鳴曲』の後日談として(『翼ある闇』の前日談?)、先行作を一種のミスディレクションとしているので、本作だけではあまり楽しめないだろう。
本作もそれなりに楽しめたが、今後このシリーズがどう発展していくかが非常に楽しみである。

No.168 8点 龍は眠る- 宮部みゆき 2004/05/30 11:47
宮部みゆきはあまり読まないけれど、これまた独特の作品。
超能力を持つ二人の少年を中心に描き方も上手ければ、それによって最終的な収束の仕方も・・・というより、そこまでの過程が秀逸。
読み終わった後も気持ちよくさせてくれる。

No.167 6点 囲碁殺人事件- 竹本健治 2004/05/24 23:36
『匣の中の失楽』に比べ、かなり真っ当なミステリ。
フーダニットに首切りのホワイダニット、さらに暗号まで出てくるがちがちの本格!
囲碁の知識が無くても読めるので安心。
ただし犯人も動機も多少わかりやすいの、物足りないが、氏の作品の入門編としては最適。

No.166 7点 積木の塔- 鮎川哲也 2004/05/19 22:46
ある事件の犯人と思しき人物が第二の事件で殺され、第三の事件が起こる。他にも犯人の動機を探るシーンも丁寧に描かれていて楽しめた。
やや短めのせいか、あっさりしすぎていたようにも感じたが、ちょっとした手がかりから謎がするすると解けていくのは読んでいて気持ちがいいものである。
鬼貫物の中では標準的な作品といってしまえば、それまでだが、やはり面白い。

No.165 6点 ゲームの名は誘拐- 東野圭吾 2004/05/16 18:28
事件の発端から読者をグイグイと引っ張ってくれる。
誘拐にハプニングが起きるポイントも絶妙で(なんせ誘拐が終わった後に起きるんだから)、しっかり伏線を張ってある。二人のゲーム的な駆け引きも非常に面白い。
ただし、誘拐物の魅力は最後に事件の様相そのものが、ガラリと変わってしまうカタルシスにあると思う。それは叙述トリックにも通じる物である。しかし、本作はラストもだいたい予想している範疇だった。むしろ、ほとんどわかってしまったのは残念である。
ただし設定自体は、なかなか新鮮で(別に狂言誘拐が新鮮と言ってるのではない)充分楽しめる。

No.164 4点 ペルシャ猫の謎- 有栖川有栖 2004/05/16 18:21
今までの作品に比べるとかなり毛色の違った短編集。
この作品において共通していえるのは、心情的なところに力を入れていることと、本格度の薄さ。
表題作では、かなりの禁じ手を使っているが、それをトリックでもなく怪奇的な落ちにするのでもなく、起こりえる現象として処理しているのは前例にないかもしれない。
が、この短編には全く(と、あえて言おう)本格要素がない。中井英夫の『虚無への供物』竹本健治『匣の中の失楽』、最近では乾くるみの『匣の中』などアンチミステリでありながらも、過程においてはひたすら本格的でさえある。そういった物が、これには無いため、とても成功しているとはいえない。

No.163 8点 地底獣国の殺人- 芦辺拓 2004/05/03 22:54
秘境冒険SF、国際スパイ、古代史、そして本格ミステリという、並外れたトンデモ本。
ここまでやると一つ一つが中途半端に感じなくもないが、トリックがこの舞台としっかり結びついてるのは上手く、祖父の春之助が遭遇した事件を森江春策が解くという展開にも意味があり、本格度が多少弱いのも気にならず、とても楽しめた。
それにしても、こんな作品を森江春策シリーズとして書いてしまうからにして、とんでもない。
読む前は取っつきにくそうだが、おすすめの一作。

No.162 6点 探偵宣言- 芦辺拓 2004/05/03 22:43
芦辺拓の特徴である、いき過ぎた技巧が長編だけでなく短編にまで出ている。あまりに技巧的なまでに解決を読み返さないと理解しづらく、短編としてはあまり上手いとは言い難い出来だった。
「殺人喜劇の迷い家伝説」で家屋消失に挑んだのは嬉しいが、泡阪妻夫の「砂蛾家の消失」や二階堂黎人「ロシア館の謎」(どちらも傑作)のような一発トリックでないのは残念。
「殺人喜劇のXY」はダイイングメッセージに何通りもの解決をつけるのはいいが、中国語を利用した物ばかりで面白みには欠ける。
最後の「殺人喜劇の森江春策」も連作の仕掛け的な作品で、出来はあまりよくない。その仕掛けも個人的には好きだけど、あまりいい働きをしているようには思えない。
こんな作品を書いてしまうところが、芦辺拓の良いところであり、悪いところでもある。

No.161 5点 殺人喜劇のモダンシティ- 芦辺拓 2004/04/29 00:21
芦辺拓=過多本格。
そのイメージ通りの作品であり、さらには探偵小説やら映画やらの博覧強記。
そういった雰囲気を楽しませるのが、作者の主眼なのだろうが、本格としては『殺人喜劇の13人』よりもそこが浅くいまいち。
過多、故に焦点がぼやけるというのが強く感じられた。

No.160 6点 探偵ガリレオ- 東野圭吾 2004/04/29 00:16
まず、これはハウダニットではない。
これを単なる物理や化学の応用トリックによるミステリだと思い込んでしまうと、拍子抜け以外の何物でもない。
これは、そのトリックを利用した話の展開と、それに付随するトリックの使い方が非常に上手い。
「転写る」の様にデスマスクが現われ、その偶発事故が犯人のアリバイを看破させてしまう。その上手さは読んでみれば、わかる(はずなのだが、予想以上に評価が低い)
物理化学を逆手に取った佳作。

No.159 6点 一の悲劇- 法月綸太郎 2004/04/18 23:05
前作『頼子のために』とは手法こそ違えど、根本のテーマは近く、悲劇的な作品。
サスペンスフルな展開に目まぐるしく変わる容疑者と充分に楽しめる。ただし、最後の真実は読者の予想出来る範囲だったという意味では、いささか物足りない。
(といってもこの作品を書いた意義は認めている)
付け加えておけば、この作品には『名探偵』は必要であると思う。この物語における『名探偵』の意義は?『名探偵』であることの苦悩を交え、本当に『名探偵』は必要なのか、と思わせるには必要な舞台装置である。

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