皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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テツローさん |
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平均点: 7.46点 | 書評数: 108件 |
No.8 | 7点 | ジュリエットの悲鳴- 有栖川有栖 | 2002/11/20 00:47 |
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ミステリではないが「登竜門が多すぎる」が適度に笑えて良い。ミステリでは「世紀のアリバイ」が、この中では一番かな。短いし、論理的に分かる代物でもないが、ラスト思わず「あっ!!」と言わされた。 「タイタンの殺人」SFミステリな訳だが、もうひとひねり欲しいかな。「パテオ」幻想譚としてどうこうより、主人公があわれだと思った。 「裏切る眼」「危険な席」「夜汽車は走る」ヒロインの描写が少々…。ヤな女だなと思ってしまう。 表題作、最後主人公は、自殺したのか? 雰囲気は良いが、後味悪し。 |
No.7 | 8点 | ペルシャ猫の謎- 有栖川有栖 | 2002/11/11 22:04 |
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本格ミステリとして良いのは「暗号を撒く男」くらいか?これとて「単なるクイズやん」という批判はあろうが、これはこれで、と思う。「赤い帽子」は本格ではない、通俗物と言う感じだが、良い読後感だった。「ひたすら虚ろだ。まるで、黒々とした穴のように」の辺り、ぞくっ、とした。ここから火村につながるのかと思ったがそんなこともなく。 表題作は、う〜ん…僕も落ちはこれでも良いと思うが、『あり得ない仮設を消し去り、最後に残ったのが、どれほどありそうになくても真実だ』を納得させるためには、消し去られる仮説を、もっと積み重ねるべきだったと思う。「切り裂きジャックを待ちながら」「わらう月」もハタと膝打つ解決とは言いがたい。もう少し長く書くべきかと。 「猫と雨と助教授と」は、同人的キャラ萌え感が前面に出過ぎで、ちょっと。「悲劇的」も似たようなものだが、ラストの火村の突き放すような一言は良い。火村というキャラのこういうスタンスは、シリーズ通して好きだから。 |
No.6 | 7点 | まほろ市の殺人 冬- 有栖川有栖 | 2002/07/17 23:50 |
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最初、三千万円の隠し場所を決めかねて右往左往するユーモアミステリになるのかと思ったが、そんなこともなく(それで押し通してくれても良かったと思うが)、次に、殺した男の幻に延々付きまとわれる幻想小説になるのかと思ったが、そんなこともなく(それで押し通されてたら腹がたったろう)、まともにミステリとして決着したのでちょっとびっくりした。絶対幻想小説で落とすんだと、読んでる途中は思っていたから。(ミステリで良かった) 「幻想都市の四季」四部作全てに出る中川刑事が、唯一格好良い作品。この作品が倒叙物だけに、まるでコロンボの様。他の作品でも、もっとこういう活躍が欲しいところだった。 謎解きは確かに無理無茶が多いとは思うが、全体的にまあ及第点はあると思う。 |
No.5 | 7点 | ブラジル蝶の謎- 有栖川有栖 | 2002/06/04 00:11 |
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「蝶々がはばたく」が好きだ。意図せぬ密室であり、力技であるのだが、このだまされ方は心地良い。バタフライ効果の話題を振っているのも、効果的だと思った。ラストの締めも、奇を衒い過ぎてるかもしれんが、良い方向へ余韻の残る締めだと思う。 表題作、蝶をモチーフにして語られる犯人指摘のロジックは、小技だとは思うが、納得いくものだった。ラスト、逆切れした犯人が火村を糾弾するシーン、ミステリではよくあることだが、火村の反撃はこのシリーズ独特のものだろう。決して負けない火村の描写が良い。 「彼女か彼か」まあ、単純と言えば単純。蘭ちゃんがうざいと言えばうざい。あじのあるキャラではある。 「人喰いの滝」火村による事情聴取の際の問答、ダイイング・メッセージの検討、「夜明け前に新しい長靴を下ろすのは何故」という命題の提示、等、これらミステリの約束事(いわゆるコードと言うやつ?)の羅列は面白く感じたが、解決が無理っぽいような気がした。 全体的には佳作だと思う。読み易いのも良い。 |
No.4 | 9点 | ロシア紅茶の謎- 有栖川有栖 | 2002/04/08 01:04 |
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表題作、毒の隠し場所の候補を、一つ挙げては潰し、一つ挙げては吟味し、最後に残ったのが正解、という筋立てになっているのが、正に本格で、良いと思った。「動物園の暗号」の、中糸氏の特技を追求する辺りもそうかな。 そして、これは探偵役の人物像・背景・性格設定にも係わるが、火村が犯人を追い詰める時の容赦無さが、大変小気味よいと感じる。このシリーズ全体の好きな点の一つである。 |
No.3 | 8点 | 英国庭園の謎- 有栖川有栖 | 2002/03/31 23:24 |
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無理のある話もあるとは思います。「雨天決行」とか。でもまあ、それも含めて全体的に良い短編集だったと思います。 気に入った作品は、「竜胆紅一の疑惑」と「英国庭園の謎」。前者は犯人の動機の設定が良いと感じた。後者でアリスが言っていたセリフ「江戸川乱歩の『大金塊』、この暗号を諳んじてなかったら、モグリやろう」には、まさしく同感。僕も言えます。何かうれしかったので。 |
No.2 | 10点 | 孤島パズル- 有栖川有栖 | 2002/03/23 19:14 |
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良いですね。犯人指摘のロジックもさることながら、嵐の孤島というこの舞台設定、嵐の晩の雰囲気描写が、もう好きで好きで。 実際途中で何回か、本を置いてしまいました。決して読めなかったのではなく、読み進めるのがもったいないと感じたから。「このまま読み進めてしまったら、やがて嵐は去って行ってしまう。どうして嵐は去ってしまうのだろう。あぁ、嵐が来て、このままずっと嵐だったらいいのに!」などと考えて… まったくもう、身悶えしながら読んだミステリなんざ、これが初めてや。 |
No.1 | 10点 | 月光ゲーム- 有栖川有栖 | 2002/03/23 18:33 |
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これは良い。学生アリスシリーズは軒並み本格テイストにあふれているから好きですね。マッチの燃えカスという一つの遺留品から、唯一可能な犯人を導き出す論理は、震えがくるほど感動しました。その後の「大きな門が軋みながらゆっくりと開いていく情景が僕の頭に浮かんだ」という心理描写も、「そうや、まさしくそうなんや」という感じでうれしかったです。 解決編までが退屈という意見も、正統な本格ミステリの宿命と思ってます。もっともこの作品は、マーダーゲームに興じる学生達とか、月光の下での語らいなど、僕自身は「あぁ、うらやましい」と感じた、青春物としても魅力的な作品だと思います。 |