皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
フリップ村上さん |
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平均点: 7.73点 | 書評数: 26件 |
No.5 | 1点 | 魔神の遊戯- 島田荘司 | 2002/09/17 21:09 |
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島田荘司いまだ浮上せず。 ていうか、こいつは第二のトリック盗用疑惑でないの、ハッキリ言って。 確かにこれなら記述者が石岡でないことに必然性はあるが、高木彬光の超有名作を露骨に想起してしまったのは私だけか? ひねりなしで一発勝負的アイディアを引用している分『夜は千の鈴を鳴らす』の五万倍(当社比)悪質な感じがする。 文中の記述から動機を推測するのが不可能。ロジックだけで犯人を特定することが出来ない等、本格を標榜するにはあまりに瑕疵が多いが、それでも《未来の記憶の再現》というのは、見立て殺人における新機軸。借り物のドンデン返しなどなくても、読物としては充分なレベルをクリアしているのに、返す返すも惜しい。というより悔しい。 21世紀のミステリに、トリックの前例云々を問題視すること自体ナンセンスかもしれないが、他ならぬ島田自身が『金田一少年』であれほど痛い目にあっているのだ。例えそこに悪意はなくとも、とうてい許される行為ではなかろう。猛省を請う! |
No.4 | 9点 | 異邦の騎士- 島田荘司 | 2002/07/20 21:20 |
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世に受け入れられぬ自尊心をもてあましながら、ギリギリの踏ん張りで孤高の魂を謳歌する若き御手洗潔のなんと魅力的なことか。 奇を衒った態度の裏に見え隠れする、痛々しいまでにピュアな感性は、傲岸不遜が鼻につく現在の姿とは完全に似て非なるもの。 それはまた、己の存在を世間に認めさせようとあがき続けていた、当時(デビュー前夜)の島田荘司本人の姿なのかもしれない。 そういう意味では限りなくパーソナルな、青臭い情熱の叩きつけであり、作中人物に共感することさえ出来れば、読者にとっても生涯の宝物となるだけのポテンシャルを秘めている。 ミステリー的な完成度うんぬんを越えた、青春小説の一大傑作。 それにつけても、危機一髪の場面で御手洗がバイクを駆ってはせ参じるシーンの異様なまでの格好よさ。ここはぜひとも、《リターン・トゥ・フォーエヴァー》の「ロマンチック・ウオーリァー」をBGMにページをめくっていただきたいものである。鳥肌ものですよ。 |
No.3 | 5点 | ロシア幽霊軍艦事件- 島田荘司 | 2002/07/19 22:47 |
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もはや大家の島田荘司。小説としての面白さはやはり熟練の味。 ただし、「普通の人なら全く知らない」けど「軍事or航空機マニアなら常識」という、単なる歴史上の《知識》を《発端の魅力的な謎》と言い切ってしまう神経はどんなものか? いや、確かにアレは、先っぽだけなら軍艦に見えるとは思うけどさぁ…… |
No.2 | 8点 | 斜め屋敷の犯罪- 島田荘司 | 2002/07/19 22:43 |
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《建築トリック》という唯一無二のジャンルを創生したという点において、『占星術〜』をそのぐ島田ミステリの真骨頂と言い切ってしまいましょう。 「例のページが見えたらおしまいだから」、とばかりに輪ゴムで袋とじ状態にして友人に勧めまくったのも懐かしい思い出です。 ただし、本来ならば一発勝負であるこのトリックを、後の作品でバリエーション展開させてしまったことは大いに不満。いくら自分が考案したからといって《補助線を引く場所が違う》というだけでは二番煎じも良いところ。 それさえなければ文句なしに満点なのに…… |
No.1 | 10点 | 占星術殺人事件- 島田荘司 | 2002/07/15 23:45 |
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乱歩賞落選の講評で「このトリックを生かすにはコメディにするしかない」と頭からクサされていたのも今は昔。 新本格なんて言葉は陰も形もない《あの時代》にこんなものを書き上げてしまった島田荘司の飛びっぷり、ズレっぷりには、素直に頭が下がります。(それだけに、ここ数年顕著な増長慢ぶりが悲しくもあるのだが) というわけで、最近の読者の評価が低いというより、リアルタイム読者の感じた衝撃度が高すぎるたのでは、という自戒を持ちつつ、実はこのトリック《○○○○死体》(漢字一文字、あとひらがな)のとんでもなく画期的なバリエーションなんだよ、と思うと……。やっぱり名作だぁ! |