皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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じゃすうさん |
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平均点: 6.96点 | 書評数: 57件 |
No.3 | 7点 | ハードラック- 薬丸岳 | 2012/02/23 22:38 |
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今回は単純に社会性のあるテーマよりも、よりエンタテイメント性を重視した作品のような印象を受けました。
もちろんそれが作品としてマイナスというわけではありません。新境地というのは確かにそうでしょう。 話の吸引力は、これまでの作品に比べてもよくなっている印象ですし、真相へのミスリードも上手くなっているように感じました。 しかし社会性<エンタテイメント性 と評したように、やはり動機や、そういった行動を取らざるを得なくなったやり切れなさという面への言及や心象描写が、これまでの作品と比して弱いのではないかと感じてしまうのは否めません。 とても面白く読めたのは確かですが。 |
No.2 | 7点 | 闇の底- 薬丸岳 | 2011/03/08 22:50 |
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虚夢の次に読みましたが、今回は司法への問題提起というカラーは薄いように感じました。
むしろ『幼女暴行殺人』を犯した者を、私刑という形で葬っていくことは許されることなのか、という問いがあるように思えました。 もちろん(現在では)法律的にも道徳的にも、許されるものではないのですが、現実にもそういった事件が起きたばかりということもあり、考えさせられるものでした。 最後の刑事の選択、賛否両論でしょうね。 しかし共感できてしまう、支持したいと思ってしまうのは、たぶん人として自然な感情なのではないのかと思っています。 「復讐は恨みの連鎖しか生まない(だから我慢しろ)」というのは、被害者に一方的な泣き寝入りを強いる言葉であり、それこそ人権侵害であると思います。 欲を言えばサンソンの、どうしてそういう手段を選ぶようになったのか、など深く掘り下げてもいいのではないかと思った。 テーマとはずれるが、村上と藤川、長瀬と父親のエピソードなども、もっと詳しく知りたい部分だと思った。 ミステリとしては慣れた人にはミスリードがわかりやすく、イマイチかもしれません。 |
No.1 | 8点 | 虚夢- 薬丸岳 | 2011/03/08 22:39 |
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天使のナイフで注目していましたが、今回のテーマは刑法39条。
心神喪失者の無差別殺人者が、数年の後に社会に放たれているという現状。そうした精神医療業界と精神鑑定の是非を、被害者遺族の視点から問うものとなっています。 読みやすく、重いテーマですが主人公に感情移入しながら読むことができました。ラストのどんでん返しは、予想していましたが深く頷かされました。説得力があったからです。 文庫化の際には加筆修正して、心神喪失者等医療観察法にも触れてほしいところです。 あと、精神障害者全体の犯罪率が低いということにも触れられていましたが、それは正確には、彼らの権利を擁護する側が意図的にミスリードさせるために発信している情報なので、うのみにしない方がいいでしょう。 もちろん、全員が危険なわけではありませんが、そういった業界のフェアじゃない情報開示の部分はかえって偏見を強めるだけで、きちんと指摘されてしかるべきです。 (統合失調の重大犯罪率にはわざと触れないように『精神障害者全体』の犯罪率としてますから) 現実にあった、いわき病院事件での、病院側の無責任な対応などもありますし、注意深く考えていかなければなりません。 |